相続税の減額更生の後に増額更生がされた場合の延滞税に関する最判平成26.12.12

 最高裁平成26年12月12日判決は、相続税につき減額更正がされた後に増額更正がされた場合において,増額更正により増額された税額に係る部分について相続税の法定納期限の翌日からその増額された税額の納期限までの期間に係る延滞税は発生しないとしました。

 国税通則法60条1項2号の規定の趣旨からその規定の文言を限定的に解釈した珍しい事例ですのでご紹介します。

事案の概要

 事案は複雑ですが要約すると次のとおりです。

① 相続人は、相続税を法定期限内に申告・納税(納付額は4185万1300円)した。

② 相続人が、土地の評価額が時価より高かったとして、税務署長に対し更生の請求を行い、税務署長は、納付すべき税額を3035万5500円とする減額更生をした。

③ 税務署長は、相続人に対し、過納金1149万5800円と還付加算金14万3400円を還付した。

④ その後、税務署長は、減額更正における相続土地の評価額は時価よりも低かったとして、相続人が納付すべき税額を3071万5800円とする増額更正をした。

⑤ ②と④の差額36万0300円の納期限は、その更正通知書が発せられた日の翌日から起算して1月を経過する日である平成23年6月30日であった。

⑥ 相続人は、平成23年6月3日、増差本税額を納付した。

⑦ 税務署長は、増差本税額36万0300円部分につき、納付日である同23年6月3日までの延滞税1万5800円の納付を催告した。

⑧ そこで、相続人は、延滞税の支払い義務はないとして争ったものです。

原審・東京高裁平成25年6月27日判決

 原審の東京高裁平成25年6月27日判決は次のように判断しました。

 本件のように、国税の申告及び納付がされた後に減額更正がされると、減額された税額に係る部分の具体的な納税義務は遡及的に消滅するのであり、その後に増額更正がされた場合には、増額された税額に係る部分の具体的な納税義務が新たに確定することになるのであるから、新たに納税義務が確定した本件各増差本税額について、更正により納付すべき国税があるときに該当するものとして、法60条1項2号に基づき延滞税が発生するものというべきである。

最高裁平成26年12月12日判決

 これに対し、最高裁は次のように述べて、延滞税は発生しないとしました。

「前記事実関係等によれば、本件各増額更正がされた時点において、本件各相続税については、本件各増差本税額に相当する部分につき法的効果としては新たに納税義務が発生するとともに未納付の状態となっているが、本件各増額更正後の相続税額は本件各申告に係る相続税額を下回るものであることからすれば、本件各増差本税額に相当する部分は、本件各申告に基づいて一旦は納付されていたものである。これにつき再び未納付の状態が作出されたのは、所轄税務署長が、本件各減額更正をして、その減額された税額に係る部分について納付を要しないものとし、かつ、当該部分を含め、本件各申告に係る税額と本件各減額更正に係る税額との差額を過納金として還付したことによるものである。このように、本件各相続税のうち本件各増差本税額に相当する部分については、それぞれ減額更正と過納金の還付という課税庁の処分等によって、納付を要しないものとされ、未納付の状態が作出されたのであるから、納税者としては、本件各増額更正がされる前においてこれにつき未納付の状態が発生し継続することを回避し得なかったものというべきである。

 他方、所轄税務署長は、本件各更正請求に係る税務調査に基づき、本件相続土地の評価に誤りがあったことを理由に、上告人らの主張の一部を認めて本件各減額更正をしたにもかかわらず、本件各増額更正に当たっては、自らその処分の内容を覆し、再び本件各減額更正における本件相続土地の評価に誤りがあったことを理由に、税額を増加させる判断の変更をしたものである。

 以上によれば、本件の場合において、仮に本件各相続税について法定納期限の翌日から延滞税が発生することになるとすれば、法定の期限内に本件各増差本税額に相当する部分を含めて申告及び納付をした上告人らは、当初の減額更正における土地の評価の誤りを理由として税額を増額させる判断の変更をした課税庁の行為によって、当初から正しい土地の評価に基づく減額更正がされた場合と比べて税負担が増加するという回避し得ない不利益を被ることになるが、このような帰結は、法60条1項等において延滞税の発生につき納税者の帰責事由が必要とされていないことや、課税庁は更正を繰り返し行うことができることを勘案しても、明らかに課税上の衡平に反するものといわざるを得ない。そして、延滞税は、納付の遅延に対する民事罰の性質を有し、期限内に申告及び納付をした者との間の負担の公平を図るとともに期限内の納付を促すことを目的とするものであるところ、上記の諸点に鑑みると、このような延滞税の趣旨及び目的に照らし、本件各相続税のうち本件各増差本税額に相当する部分について本件各増額更正によって改めて納付すべきものとされた本件各増差本税額の納期限までの期間に係る延滞税の発生は法において想定されていないものとみるのが相当である。

 したがって、本件各相続税のうち本件各増差本税額に相当する部分は、本件各相続税の法定納期限の翌日から本件各増額更正に係る増差本税額の納期限までの期間については、法60条1項2号において延滞税の発生が予定されている延滞と評価すべき納付の不履行による未納付の国税に当たるものではないというべきであるから、上記の部分について本件各相続税の法定納期限の翌日から本件各増差本税額の納期限までの期間に係る延滞税は発生しないものと解するのが相当である。

 そして、本件において、本件各増差本税額の納期限は平成23年6月30日であるところ、上告人らは、これより前の同月3日に本件各増差本税額を納付しているから、本件各相続税のうち本件各増差本税額に相当する部分について本件期間に係る延滞税は発生しないものというべきである。」

(弁護士 井上元)

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