地方公共団体と特別縁故者に関する札幌家裁滝川支部平成27.9.11審判

 民法958条の3は、相続人が不存在である場合、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に対し、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができると規定しています。これが特別縁故者に対する財産分与の制度です。

 この特別縁故者に対する財産分与につき、地方公共団体が申し立てた事例があるのでご紹介します。

札幌家裁滝川支部平成27年9月11日審判

事案の概要

① 被相続人(昭和3年生)は、昭和59年、A市の市民となり、平成4年、A市が設置した高齢者向けの賃貸住宅で居住するようになって、A市の手厚い介護を受けた。

② 被相続人は平成25年に死亡した。遺産として預金約1000万円が存したが、相続人はいなかった。

③ A市は、家庭裁判所に対し、特別縁故者に対する相続財産分与の申立を行った。

④ 相続財産管理人は被相続人の残余財産全部をA市に分与するのが相当である旨の意見を述べた。

審判

 次のように述べてA市の申立てを却下した。

「被相続人は、昭和59年に○○市からA市に転居し、平成4年にはA市が設置主体である○○に入居して生活を続け、平成24年○月には、介護予防支援事業契約を締結して、予防訪問介護サービスの提供を受けるようになった。そして、予防訪問介護サービスの提供を受けるに当たり、3か月に1度の割合で利用者宅をケアマネージャーが訪問するのが一般的であったにもかかわらず、被相続人については、本件担当者が、概ね1週間に1度の割合で、被相続人宅を訪問してトラブルの対処や病院への同行といった業務を担っている。このように、被相続人は、定年後、長期間にわたりA市内に居住し、予防訪問介護サービスの提供を受けるようになった平成24年○月からは、本件担当者等により、通常よりも手厚い対応を受けてきたことがそれぞれ認められるのであり、被相続人も、これらの対応に感謝の念を抱いていたであろうことは想像に難くない。

 しかしながら、本件担当者の上記業務は、介護保険制度の下で、地方公共団体の事務として介護予防支援事業契約に基づいて実施されたものである。また、予防訪問介護サービス自体は、指定介護予防サービス事業者が派遣したヘルパーが基本的に担当していたものであるし、本件担当者が被相続人の対応に当たっていた期間も約1年半にとどまり、長期間にわたって特別の対応を継続してきたとも言い難い。A市が被相続人の火葬や埋葬を執り行った点についてみても、これらは墓地、埋葬等に関する法律に基づいて行われたものであり、その費用は被相続人の相続財産から支弁されているのであるから、かかる事情をもってA市が特別の負担をしたとみることは困難である。そして、被相続人が、その相続財産を本件担当者や申立人に贈与するとか、遺贈するといった趣旨の話をしたという事情も特段うかがえない。

 以上で指摘したところによれば、相続財産管理人の上記意見を踏まえても、A市が被相続人の療養看護に努めた者に当たるとも、被相続人と特別の縁故があった者に当たるとも認めることはできない。」

コメント

 地方公共団体も特別縁故者に当たると解するのが一般的であり、地方公共団体に特別縁故者として財産を分与した裁判例もいくつか存するところです。

 本件でも、地方公共団体も特別縁故者になり得ることを前提としてA市の具体的な関与状況を検討し、申立を却下したものです。

 本件では結論として否定されましたが、民間の老人施設でも、特別縁故者に該当する可能性があるのなら、相続人がいな場合、この申立を検討してもよいかもしれません。ただし、そのためには、相続財産管理人の選任が必要であり、その費用を要することに留意してください。

(弁護士 井上元)

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