専ら相続税の節税のための養子縁組を有効とした最判平成29.1.31

相続税と養子縁組

 相続税は、課税遺産総額に対して一定の率で計算されますが、課税遺産総額は課税価格の合計額から基礎控除額を控除した金額となります。

〔平成27年1月1日以後に相続が開始(被相続人が死亡)した場合〕

課税価格の合計額 - 基礎控除額(3、000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)= 課税遺産総額

 すなわち、法定相続人が多ければ多いほど、基礎控除額が多くなり、相続税も少なくなるわけです。節税対策として被相続人の孫を養子にすることが多いのではないでしょうか。

 ただし、無制限に節税できるわけではなく、法定相続人のなかに養子がいる場合の法定相続人の数は、次のとおりとなります。

(1) 被相続人に実子がいる場合は、養子のうち1人までを法定相続人に含めます。

(2) 被相続人に実子がいない場合は、養子のうち2人までを法定相続人に含めます。

 また、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、上記(1)又は(2)の養子の数に含めることはできません。

〔参照〕 国税庁>No.4152 相続税の計算

 一方、次のいずれかに当てはまる人は、実の子供として取り扱われますので、すべて法定相続人の数に含まれます。

(1) 被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている人

(2) 被相続人の配偶者の実の子供で被相続人の養子となっている人

(3) 被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた人で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった人

(4) 被相続人の実の子供、養子又は直系卑属が既に死亡しているか、相続権を失ったため、その子供などに代わって相続人となった直系卑属。なお、直系卑属とは子供や孫のことです。

〔参照〕 国税庁>No.4170 相続人の中に養子がいるとき

専ら相続税の節税のための養子縁組の有効性

 このような相続税の節税対策を目的とした養子縁組の有効性がこれまでも問題とされてきましたが、最高裁平成29年1月31日判決は有効としました。マスコミ等でも注目を集めた判決ですのでご紹介します。

最高裁平成29年1月31日判決

事案の概要

① 被相続人の子は長男、長女及び二女の3名であった。

② 被相続人は、税理士等から、長男の子を養子とした場合に遺産に係る基礎控除額が増えることなどによる相続税の節税効果がある旨の説明を受け、長男の子と養子縁組を行った。

③ 被相続人が死亡した後、長女及び二女は、長男の子に対して、本件養子縁組は縁組をする意思を欠くものであると主張して、その無効確認を求めた。

④ 原審は、本件養子縁組は専ら相続税の節税のためにされたものであるとした上で、かかる場合は民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとして、被上告人らの請求を認容した。

最高裁判決

 しかしながら、民法802条1号の解釈に関する原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

 養子縁組は、嫡出親子関係を創設するものであり、養子は養親の相続人となるところ、養子縁組をすることによる相続税の節税効果は、相続人の数が増加することに伴い、遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。

 そして、前記事実関係の下においては、本件養子縁組について、縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はなく、「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。

コメント

 相続税の節税対策のための養子縁組の問題については、これまでもコラムで解説してきましたが、今般の最高裁判例により実務上は決着がつけられました。

 ただし、養子縁組は子どものために行われるべきであるとの点は忘れないようにしてください。

コラム「遺留分減少目的の養子縁組の有効性

コラム「相続税の軽減目的の養子縁組に関する裁判例

コラム「相続税対策等で孫を養子にすることの問題点~未成年後見~

(弁護士 井上元)

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