家族信託を無効とした東京地裁平成30.9.12判決

 遺留分を侵害する家族信託を無効とする判決が現れています。注目すべき判決ですのでご紹介します。

東京地裁平成30年9月12日判決(金融法務事情2104号78頁)

事案の概要

① Aは平成27年2月18日に死亡し、その相続人は、長男であるX、二女であるBおよび二男であるYの3名である。

② Aは、平成27年2月5日、Yとの間で、Aを委託者、Yを受託者とし、次の内容の信託契約を締結した。

信託目的:Aの死亡後も、その財産を受託者が管理・運用することによって、Yおよびその直系血族がいわゆるA家を継ぎ、お墓・仏壇を守っていってほしいとのAの意思を反映した財産管理を継続すること。なお、Aは祭祀を承継するYにおいて、その子孫を中心として管理、運用することにより、末永くA家が繁栄していくことを望む旨が記載されている。

信託財産:A所有不動産および300万円

信託事務:受託者は、信託金銭を用い、信託不動産に関する公租公課・修繕費その他信託不動産の維持管理に必要な一切の費用の支払のために使い、信託金銭を、受益者の身上監護のために使うことができる。

委託者の権利:委託者の死亡により消滅する。

受益者:当初受益者をAとし、A死亡後の受益者につき、第1順位としてXに受益権割合6分の1、Bに受益権割合6分の1、Yに受益権割合6分の4、第2順位としてYの子供らが均等に取得する。

③ 原告Xが、二男である被告Yに対し、Aが死亡13日前にした信託契約が意思無能力または公序良俗違反により無効である等の主張に基づき、信託に基づき行われた不動産の所有権移転登記および信託登記の各抹消登記手続等の請求をした。

判決

 Aの意思無能力能力との主張は排斥されましたが、信託契約については次のように判示して一部無効としました。

「上記認定事実によれば、Aは、本件信託において、A所有の全ての不動産を目的財産とし、信託財産により発生する経済的利益を受益者に受益権割合に従って分配するものとしたが、A所有不動産のうち、上記④及び⑤の各不動産は、これを売却しあるいは賃貸して収益を上げることが現実的に不可能な物件であること、また、上記①の不動産についても、駐車場部分の賃料収入は同不動産全体の価値に見合わないものであり、上記①の不動産を売却することも、あるいは全体を賃貸してその価値に見合う収益を上げることもできていないことが認められ、これらは本件信託当時より想定された事態であるといえることからすると、Aは、上記①、④及び⑤の各不動産から得られる経済的利益を分配することを本件信託当時より想定していなかったものと認めるのが相当である。

 加えて、上記認定のとおり、Aが本件信託前に行った本件死因贈与は、Aの全財産の3分の2を被告に、3分の1をBにそれぞれ死因贈与するという、原告の遺留分を侵害する内容のものであったこと、本件信託は、Aの全財産のうち全ての不動産と300万円を目的財産とし、原告に遺留分割合と同じ割合の受益権を与えるにとどまるものであったことからすると、原告が遺留分減殺請求権を行使することが予想されるところ、仮に、原告が遺留分減殺請求権を行使し、本件信託における原告の受益権割合が増加したとしても(なお、遺留分減殺の対象を受益権とみるべきことは、後記3のとおりである。)、上記①、④及び⑤の各不動産により発生する経済的利益がない限り、原告がその増加した受益権割合に相応する経済的利益を得ることは不可能である。

 そして、本件信託においては、受益者は他の受益者に対して受益権の取得を請求することができるとされているものの、その取得価格は最新の固定資産税評価額をもって計算した額とするものと定められていることからすると、受益権の取得請求によっても上記各不動産の価値に見合う経済的利益を得ることはできない。そうすると、Aが上記①、④及び⑤の各不動産を本件信託の目的財産に含めたのは、むしろ、外形上、原告に対して遺留分割合に相当する割合の受益権を与えることにより、これらの不動産に対する遺留分減殺請求を回避する目的であったと解さざるを得ない。

 したがって、本件信託のうち、経済的利益の分配が想定されない上記①、④及び⑤の各不動産を目的財産に含めた部分は、遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用したものであって、公序良俗に反して無効であるというべきである。」

コメント

いわゆる家族信託と呼ばれる信託につき遺留分減殺請求が可能か否かにつき争いのあるところでしたが、上記判決は、公序良俗に反して無効との判断をしました。信託により容易に遺留分減殺請求から免れるということはありませんのでご注意ください。

(弁護士 井上元)

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