平成30年相続法改正~遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

 従来、相続開始後、特別受益のある相続人が、遺産分割前に遺産を処分した場合に不公平な結果が生じていました。

(事例)

被相続人:父

相続人:長男と二男

遺産:預金2000万円

特別受益:長男に対する生前贈与2000万円

相続開始後の出金:長男が預金から1000万円を出金

 この場合、遺産である預金は1000万円しかありませんので、遺産分割の結果は次のとおりとなります。

長男:生前贈与2000万円+相続後の出金1000万円=3000万円

二男:預金1000万円

 問題は、二男が、民事訴訟で不法行為や不当利得を理由として、長男に対し出金1000万円の返還請求できるかですが、特別受益の認定や寄与分の問題もありますので、最終的に二男が遺産分割で取得できたはずの具体的相続分を確定することはできず、取り返すこと自体が困難かもしれません。最高裁平成12年2月24日判決は「民法903条1項は、共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分又は指定相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し、その残額をもって右共同相続人の相続分(以下「具体的相続分」という。)とする旨を規定している。具体的相続分は、このように遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって、それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず、遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり、右のような事件を離れて、これのみを別個独立に判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない。したがって、共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法であると解すべきである。」と判断しているからです。

 仮に取り返すとしても、出金1000万円の半分に限定される可能性があります。更に、取り返すことができるとしても、民事訴訟を提起しなければなせん。

 このような不公正をなくすために、次のような改正となりました。

(要点)

ア 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人全員の同意により、当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができる。

イ 共同相続人の一人又は数人が遺産の分割前に遺産に属する財産の処分をした場合には、当該処分をした共同相続人については、アの同意を得ることを要しない。

 この結果、上記の事例では、長男が出金した1000万円も遺産に含めることができることになり、二男は、遺産分割として、預金残金1000万円を取得するとともに、長男から1000万円を支払ってもらうことが可能となりました。

施行期日

 公布の日(平成30年7月13日)から1年以内に施行されます(別途政令で指定されます)。

参考サイト

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(弁護士 井上元) 

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