自筆証書遺言と動画の撮影に関する東京高判H29.3.22

 近時、自筆証書遺言を作成する際、遺言者を動画で撮影する手法が喧伝されています。これは、当該遺言が遺言者の真意に基づき作成されたことの証拠になるとともに、相続人に対する影響力もあるでしょう。

 しかし、遺言者の意思能力に問題がある事案では、動画の存在により、直ちに、当該遺言が有効とされるわけではありません。

 東京高裁平成29年3月22日判決は、自筆証書遺言の有効性の判断に当たり動画の実質的証拠能力について判示しており、参考となりますのでご紹介します。

東京高裁平成29年3月22日判決

 判決は動画につき、「実質的証拠力は、本件動画に顕れた亡○子の言動、本件遺言書や本件動画の保管状況及びこれに関する被控訴人の説明の合理性その他諸般の事情を総合して判断すべきである。」と述べた後、次のように判示して、自筆証書遺言を有効とした原審を破棄し、遺言を無効としました。

「本件動画は、平成25年○月○日に撮影されたものであり、同日、亡○子の座る席上に本件遺言書の本文が書かれたものと思われる遺言書があり、亡○子が、これを読み上げて、「わたくしの全財産を、乙山、春子に、へ、相続させる。」と発言し、本件動画中の封筒に氏名を記載する様子が撮影されている。また、本件遺言書の日付は、一応、「二〇一三 二・八」と読めるものである。

 しかし、本件動画には、亡○子が、本件動画中の遺言書の全文、日付及び氏名を自書し、押印したことそれ自体は撮影されていない。また、自ら記載した文章なのであれば、亡○子があえて「に」を「へ」と読み間違えるのは不自然との感は否めない。

 そして、本件動画には、視野に入りやすい位置に置かれた本件新聞が何度も映されており、後日の証拠となることが撮影者において十分意識されていたことが推認される。にもかかわらず、亡○子が、遺言書の全文、日付及び氏名を自書し、押印する動作が断片的にすら全く撮影されていないことは、実に不自然といわざるを得ない。この点について、被控訴人は、亡○子の体調への配慮から、部分ごとに撮影を行うことしかできなかった旨主張するけれども、○○も立ち会う中で、被控訴人が亡松子の体調に配慮して具体的に何をしていたのか、動画を撮影できないこととなる事情としてどのようなことがあったかは、全く明らかではない。」

コメント

 上記事案は、遺言者が別の公正証書遺言を作成していたにもかかわらず、全財産を特定の相続人に相続させる内容であったこと、遺言者には既に認知症の症状が出ていたことなどの事情がありました。判決では、これらの事情を総合して、遺言を無効としたものです。

 動画の撮影の効果を否定するものではありませんが、意思能力については、遺言書作成時において意思能力の鑑定を行う方法もあります。状況に応じてご検討いただければと思います。

(弁護士 井上元)

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