カーボン複写方式の遺言の偽造についての問題点

   カーボン紙を用いた自筆証書遺言について、自書の要件を満たすかについては、最高裁平成5年10月19日判決(判タ832号78頁)が肯定しており、その理由については、上記最高裁判決の原審などが示しているように、カーボン紙による複写は本人の筆跡が残り、その意思に基づく記載かどうかの判定は比較的容易であることなどが挙げられています。

 しかし、カーボン複写方式で作成された自筆証書遺言について、その作成の方法からくる特有の偽造の問題点を指摘している裁判例があります。

1 東京地裁平成9年6月24日判決(判時1632号59頁)

     東京地裁平成9年6月24日判決は、カーボン複写方式で作成された自筆証書遺言について、裁判所選任の鑑定人が真筆であるという筆跡鑑定結果を出したにもかかわらず、偽造されたものと認定した事案です。 

(1)自書について

      まず、上記東京地裁判決は、自書に関して、「本件遺言書は、カーボン複写の方式により作成されたものであり、その元となった書面は存在しない。カーボン複写による遺言書を自筆証書遺言の「自筆」の要件を満たすものとして認めてよいかどうかについては、積極、消極の議論があったところであるが、前記最高裁判決が積極説を採ることを明らかにしたことにより、実務上そのような取扱いをすべきことに確定した。」と述べたうえで、「しかし、法律の解釈として、そのような見解が示されたとはいえ、遺言書がカーボン複写の方式により作成されたものである場合には、なお、次のような問題がある。」として以下の問題点を挙げました。 

(2) カーボン複写方式の問題点

①カーボン複写により書面が作成された場合、書面に記載者が直接記載する場合に比べて、偽造の可能性が高まるものといえる。

②特に、第三者が記載者の印鑑の押捺された用紙と記載者作成に係る一定数の文章を入手しているような場合には、それらの文書を利用して、第三者が記載したい内容に沿った文字を選択し、これに基づいて下書きを作成し、これをカーボン紙の上に載せて筆記具で上からなぞる等の方法により、当該記載者の筆跡に似た筆跡の書面を完成させることが可能となる。その場合、筆記具の種類や記載部分の重なりによる筆順が判明せず、また、カーボン複写の場合には特別な筆圧で記載されることから、筆圧の強弱も判明しない。

③運筆についても、カーボン複写の場合には、複数枚に同時に記載することを意識した運筆となるため、書面に直接記載したものとの対比が困難となる。その結果、これらの相乗作用として、本人の筆跡と当該カーボン複写された筆跡との対比が著しく困難となる。

 上記東京地裁判決は、カーボン複写の方式により遺言書が作成された場合には、筆記具を用いて書面に直接記載された場合に比較して、筆跡が模写されたものであるかどうかの判別が著しく困難となるとしました。結論として、偽造されたものとして無効と判断しました。(弁護士中村友彦)

 

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