遺留分減少目的の養子縁組の有効性

  被相続人が特定の推定相続人に対して、自分の死後、財産を相続させたくないと思って当該推定相続人に財産を渡さない遺言を作成したとしても、後で遺留分減殺請求をされて、結局目的を達成できないばかりか、相続人間での紛争を巻き起こすことにもなりかねません。この遺留分減殺請求がなされるのを予想して、少しでもそれを抑えようとして様々な試みがなされますが、その中の一つに養子縁組があります。

  養子縁組がされることで、相続人が増えて遺留分が減少することになりますし、遺言が作成されていなくても相続分が減少することになります。しかし、養子縁組の本来の目的とは異なるので、本当に有効なのかという問題があります。

1 養子縁組

  養子縁組とは、血のつながりは関係なく、人為的に親子関係を成立させる制度です。養子縁組が成立すれば、養子は縁組の日から、養親の嫡出子たる身分を取得します(民法809)。この養子縁組は、民法上、縁組をする意思がないときは無効とされていますが(民法802条)、ここでいう縁組する意思とは、判例では、実質的なもの(本当に親子関係を創設する意思)が求められています。

相続税対策や遺留分を有する相続人の遺留分を減らす目的で養子縁組がされることがありますが、実質的な意思があるのか疑問があり、その有効性が問題となります。

2 東京高裁昭和57年2月22日判決(家月35巻5号98頁)

  東京高裁昭和57年2月22日判決は、長男が自分の父親の財産につき、弟妹の相続分ないし遺留分の割合を減少させること目的として計画し、父親と長男の妻、長男の長男及びその妻が同時に3つの養子縁組するなどの事情がある場合には、当事者間に養子縁組をする意思がないとして、養子縁組を無効としました。

  上記東京高裁判決は、以下のような事情等を考慮して、父親について「その正常な意思能力に基づきの特異な目的を有する本件縁組等の趣旨を正確に理解してなしたものとはいえないと判断するのが相当」としています。

①養子縁組がなされた当時、家族間で感情的な軋轢・対立があり、父親の財産を巡る争いが現実化していたこと。

②法律上の養子縁組をする必要性がなく、専ら弟妹の相続分ないし遺留分の割合を減少させようという、養子制度の本質からみて極めて特異な目的でなされたものであること。

③父親は高齢で判断能力等も低下していたこと

④弟妹らには養子縁組を秘匿していたこと

⑤父親の意思能力が問題とならないように長男が配慮した形跡がないこと

3 大阪高裁平成21年5月15日判決(判時2067号42頁)

  大阪高裁平成21年5月15日判決は、養子縁組が主に養親の財産を養子に相続させることのみを目的としており、縁組の意思がなく無効としました。

 (1)民法802条について

    上記大阪高裁判決は、民法802条について「縁組をする意思」(縁組意思)とは、真に社会通念上親子であると認められる関係の設定を欲する意思をいうものと解すべきであり、したがって、たとえ縁組の届出自体について当事者間に意思の合致があり、ひいては、当事者間に、一応法律上の親子という身分関係を設定する意思があったといえる場合であっても、それが、単に他の目的を達するための便法として用いられたもので、真に親子関係の設定を欲する意思に基づくものでなかった場合には、縁組は、当事者の縁組意思を欠くものとして、その効力を生じないものと解すべきである」といて、まず実質的な意思が必要であることを述べました。

(2)相続目的がある場合

   そして、上記大阪高裁判決は、「親子関係は必ずしも共同生活を前提とするものではないから、養子縁組が、主として相続や扶養といった財産的な関係を築くことを目的とするものであっても、直ちに縁組意思に欠けるということはできないが、当事者間に財産的な関係以外に親子としての人間関係を築く意思が全くなく、純粋に財産的な法律関係を作出することのみを目的とする場合には、縁組意思があるということはできない。」として、相続目的だけでは縁組意思に足りないとしました。

(3)相続目的だけであること

   上記大阪高裁判決は、以下のような事情を考慮して、相続目的だけの養子縁組としました。

①養子縁組当時、養親子間に交流なく親子という身分関係を築く基礎となる人間関係はなく、養子縁組後も親族として交流した形跡がまったくなかったことから、親子として人間関係を築く意思がなかった

②養親の死後、速やかに貯金解約等の相続手続きをとっていた

 遺留分を減少させることのみの養子縁組は無効となる可能性が高いですし、相続人間で紛争になるおそれがありますから、将来相続で揉める見通しがある場合には避けた方が無難でしょう。

(弁護士中村友彦)

補遺

 最高裁平成29年1月29日判決は、専ら相続税の節税のための養子縁組も有効であるとの判断をしました。詳細は下記コラムを参照してください。

コラム「専ら相続税の節税のための養子縁組を有効とした最判平成29.1.31

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