遺留分減殺請求権の時効と後見開始

1 遺留分減殺請求権の消滅時効

 遺言などにより自己の遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は、相続の開始および減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、当該遺留分減殺請求権は時効によって消滅します。また、相続開始の時から10年を経過したときも同様です(民法1042条)。

2 遺留分権利者が未成年者または成年被後見人の場合

 遺留分権利者が未成年者または成年被後見人の場合であって、時効の期間満了前6ヶ月以内の間に法定後見人がいないときは、その未成年者または成年被後見人が行為能力者もしくは法定代理人が就職した時から6ヶ月を経過するまでの間は、未成年者または成年被後見人に対して時効は完成しません(民法158条1項)。

 その趣旨は、未成年者や成年被後見人は法定代理人を有しない場合には時効中断の措置を執ることができないのであるから、法定代理人を有しないにもかかわらず時効の完成を認めるのは酷だからです。

3 遺留分権利者が未だ後見開始の審判を受けていない場合

 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるものの、未だ後見開始の審判を受けていない者についてはどうなるのでしょうか?

 未だ後見開始の審判を受けていない以上、民法158条1項にいう成年被後見人には該当しませんが、保護されるべき事情は同様です。

 この点、最高裁平成26年3月14日判決は、時効の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされたときは、民法158条1項の類推適用により、法定代理人が就職した時から6ヶ月を経過するまでの間は、その者に対して、時効は完成しないと判断しました。

「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるものの、まだ後見開始の審判を受けていない者については、既にその申立てがされていたとしても、もとより民法158条1項にいう成年被後見人に該当するものではない。しかし、上記の者についても、法定代理人を有しない場合には時効中断の措置を執ることができないのであるから、成年被後見人と同様に保護する必要性があるといえる。また、上記の者についてその後に後見開始の審判がされた場合において、民法158条1項の類推適用を認めたとしても、時効を援用しようとする者の予見可能性を不当に奪うものとはいえないときもあり得るところであり、申立てがされた時期、状況等によっては、同項の類推適用を認める余地があるというべきである。そうすると、時効の期間の満了前6箇月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法定代理人がない場合において、少なくとも、時効の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされたときは、民法158条1項の類推適用により、法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その者に対して、時効は、完成しないと解するのが相当である。」

4 注意点

 上記最高裁判決の事案は、次のような経緯でした。

平成20年10月22日 被相続人死亡

平成21年8月5日 遺留分権利者に対する後見開始の審判の申立

平成22年4月24日 後見開始決定が確定

平成22年4月29日 後見人が遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示

 すなわち、遺留分減殺請求権は平成20年10月22日から1年間で時効により消滅するところ、その前である平成21年8月5日に後見開始審判の申立てがなされ、後見人は後見開始決定が確定した後、6ヶ月以内に遺留分減殺請求権を行使しました。

 上記最高裁判決では、後見開始審判の申立が、遺留分減殺請求権が時効で消滅する1年経過後であったなら、遺留分減殺請求権は時効により消滅することになります。

 上記のような事案では、速やかに後見開始審判申立をしなければならないことに注意しましょう。

(弁護士 井上元)

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