熟慮期間経過後の相続放棄~家庭裁判所の判断の基準

 相続発生から3ヶ月の熟慮期間が経過した後、相続人から相続放棄の申述がされたとき、裁判所はどのような基準により受理するか否かの判断を下すのでしょうか。

 この点につき大阪高等裁判所昭和61年6月16日決定が判示していますのでご紹介します。

大阪高等裁判所昭和61年6月16日決定

【事案の概要】

 昭和59年9月、Xらは被相続人である亡父の死亡及び相続権のあることを知ったが、亡父の財産、借金のあることを知らず何一つ相続しないでいたところ、突然昭和61年1月、債権者からの支払催告書が来て驚いた。Xらは早くから家を出て生活し、遠隔地で結婚生活をしていたし、亡父も生前は事業から手をひき借家の年金生活者であった。このような状況で、Xらは家庭裁判所に対し相続放棄の申述を行った。

 家庭裁判所は、Xらの相続放棄の申述を却下したため、Xらは大阪高等裁判所に抗告しました。

【決定の要旨】

1 民法915条1項所定の熟慮期間は、相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつこのように信ずるにつき相当な理由を認めるべき特段の事情がある場合には、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当であると考える(最判昭59・4・27民集38巻6号698頁参照)。

2 本件事件記録によればXらは・・・昭和59年9月亡父の死亡を知り、子供又は長女として相続権のあることは知っていた旨述べているが、・・・亡父の財産、借金のあることを知らず何一つ相続しないでいたところ、突然昭和61年1月債権者からの支払催告書が来て驚いた旨の記載があり、またXらが早くから家を出て生活し、遠隔地で結婚生活をしていたし、亡父も生前は事業から手をひき借家の年金生活者であったことなど一件記録により認められる諸般の事情に照らすと、Xらは同人らにおいて前示相続財産が全く存在しなかったと信じ、かつこのように信ずるにつき相当の理由を認めるべき特段の事情がある旨を主張しており、かつこれが認められないものでもないことが明らかである。

3 家庭裁判所の相続放棄の申述の受理は本来その非訟事件たる性質、及びその審判手続の審理の限界などに照らし、被相続人の死亡時から3か月の期間経過後の放棄申述であっても右の相当な理由を認めるべき特段の事情の主張があり、かつそれが相当と認めうる余地のあるものについては、その実体的事実の有無の判定を訴訟手続に委ね、当該申述が真意に出たものであることを確認したうえ、原則として申述を受理すべきものである。

コメント

 上記高裁決定のうち重要な部分は3の部分です。相続放棄の申述を却下してしまうと、相続人は債務の承継を余儀なくされます。一方、受理したとしても、債権者はそのXらの相続放棄は無効であると主張して地方裁判所に訴訟を提起し、慎重な審理のうえ、相続放棄の有効、無効の判断を受けることができます。とろこが、家庭裁判所の相続放棄申述の受理の審査の段階では、十分な審理を行う手続上の保障がないのです。「非訟事件たる性質、及びその審判手続の審理の限界」とはこのことを示しています。

 そして、結論として、「被相続人の死亡時から3か月の期間経過後の放棄申述であっても右の相当な理由を認めるべき特段の事情の主張があり、かつそれが相当と認めうる余地のあるものについては、その実体的事実の有無の判定を訴訟手続に委ね、当該申述が真意に出たものであることを確認したうえ、原則として申述を受理すべき」としたのです。

(弁護士 井上元)

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