近時の祭祀財産の承継に関する裁判例

 系譜、祭具(位牌、仏壇仏具、神棚、十字架など)、墳墓などの祭祀に関する財産については、相続人ではなく、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。

 そして、祭祀の主宰者は、民法897条で次のように定められており、①相続人の指定、②慣習、③家庭裁判所の審判の順で決まることになります。

1項「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。」

2項「前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。」

 この祭祀承継者を指定した近時の裁判例をご紹介しましょう。

名古屋高裁平成26年6月26日決定

 次のように述べて原審の名古屋家裁平成26年1月27日審判を変更しました。

「前記認定事実によれば、原審相手方は、被相続人の住居に隣接して居住し、被相続人が一人暮らしとなり認知症になると介護療養を行っており、被相続人の生前、親密に交流し療養に努めたほか、被相続人の葬儀も取り仕切ったと認められる。

 原審相手方は、被相続人の死後、法要を行っていないが、被相続人の死後間もない時期に原審申立人から遺産分割協議の申し入れを受けて紛争を生じていることからすると、法要を行っていないことをもって祭祀を主宰する意思を欠くということはできない。

 原審相手方は、別紙目録記載の墳墓の近くに住み、これら墳墓を自ら管理し、遺骨を先祖代々の墓に入れ、仏壇を自宅に引き取る意向である。

 これに対し、原審申立人は、○○市に居住しており、墳墓を自ら管理する意思はなく、仏壇は使える状態ではないとして処分することを考えている。しかし、仏壇は、写真で見る限り、使用に支障があるとは認められない。

 また、原審申立人は、遺骨を○○寺に納める意向であるが、被相続人が先祖代々の墓に入ることを拒んでいたと認めるに足りる証拠はない。被続人が○○と不仲であったとも認められず、被相続人が祭祀承継者として別紙目録記載の祭祀財産を管理していたことからすると、被相続人の遺骨を先祖代々の墓に納めるという原審相手方の方針は、被相続人の意向に沿うと推認される。

 なお、原審申立人が将来における墓の引継先となり得るとする○○は、当審における事実の調査において、○○から墓を頼むと言われたことはなく、墓のことは原審申立人と原審相手方が仲良く話し合い解決すべきもので、墓の管理を引き受けるのであれば「相応の負担料」があるのが常識であると述べており、同人の認識は、原審申立人の認識と一致するものとはいえない。

 以上によれば、被相続人の祭祀承継者には、被相続人の遺骨を先祖代々の墓に入れて自ら墓を管理する意向を持ち、仏壇や位牌も引き継いで自ら祭祀を主宰することのできる原審相手方を指定するのが相当である。また、被相続人の遺骨についても、民法897条を準用して原審相手方をその所有権の取得者と定めるのが相当である。」

さいたま家裁平成26年6月30日審判

「(1) 前記認定事実によれば、被相続人は、祭祀財産として仏壇、位牌、○○聖地霊園の永代使用権を有していたこと、被相続人は、祖先の祭祀を主宰すべき者について、格別、指定しなかったことが認められる。

(2) 被相続人及び当事者らが居住する地域において、祭祀を主宰すべき者についての慣習が存在することを認めるに足りる証拠はない。そうすると、祭祀財産の承継者を決めるに当たっては、被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係、被相続人の意思、祭祀承継の意思及び能力など、その他一切の事情を斟酌して決定することとなる。

 これを本件につきみるに、申立人は、被相続人と平成21年○月まで同居して生活を共にし、また、被相続人が主宰する○○の葬儀及び法事等を補助していたことに鑑みると、被相続人も祭祀の承継者として、同居していた申立人と考えていたと推測されること、被相続人が相手方と同居したのは、申立人宅の建替工事期間のごく短期間につき高齢の母親を預かるということが契機となっており、被相続人と申立人との関係が悪化したことによるものではないことがうかがえること、一方、相手方は、申立人との関係が悪化していたとはいえ、被相続人の子である申立人をはじめ、被相続人の実妹らに対し、被相続人が危篤状態となった際にも、その後死亡した事実も伝えず、密葬を済ませたことは、親族など関係者らの意思を踏まえ末永くその祭祀を主宰していくに相応しい行為ではなかったことなどが認められる。

(3) これらの諸事情を勘案すると、申立人を被相続人の祭祀財産の承継者と定めることが相当である。」

コメント

 裁判例は、一般に、被相続人との緊密な生活関係、親和関係を基準として祭祀承継者を指定している例が多く、上記裁判例は事例を追加するものです。

(弁護士 井上元)

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