特別縁故者に関する近時の裁判例

 相続人がいないと、残された財産は最終的には国庫に帰属します。しかし、死亡した方と特別の縁故にあった方に対して財産が分与されることがあります。これが、特別縁故者に対する財産分与の制度です。

 民法958条の3では「前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」と規定されているのです。

 特別縁故者に対する財産分与につき、最近、いくつかの裁判例が出ていますのでご紹介します。

特別縁故者と認めた事例

東京家庭裁判所平成24年4月20日審判

 次のように述べて、遺産総額約1億4000万円のうち申立人Aに対して500万円、申立人Bに対して2500万円の分与を認めました。

申立人A

「被相続人とE(Aの夫)間では相当程度親密な交流がされ、被相続人は、E生存中は、同人に対して財産の管理処分を任せる意向を有するなどしてEを頼りにしていたことが認められ、申立人Aにおいても主としてEを通じてではあるが、被相続人と親密な交流を継続していたものであると認められる。また、被相続人がEに財産の管理処分を託する遺言書を書いた旨伝えていたことからすれば、被相続人は、申立人Aに対しても一定程度の経済的利益を享受させる意向を有していたと認められる。これらの事情からすれば、申立人Aにつき、民法958条の3第1項の特別縁故者に該当すると認めるのが相当である。

 もっとも、上記認定事実のとおり被相続人と申立人Aとの関係は主としてEを通じたものであり、平成18年にEが死亡した後、被相続人と申立人Aが会うことはなく、被相続人が申立人Aに対してその妻の死亡の事実を伝えず、両者の関係が従前に比べかなり疎遠となり、被相続人が相続権のない申立人Aやその長女に対して被相続人の財産を相続させる意向を示したことが本件各記録上窺えず、被相続人と申立人Aの縁故関係の内容・程度は比較的薄く、上記認定事実及び本件各記録上認められる諸般の事情を併せて考慮すると、申立人Aに対する分与額は500万円の限度で認めるのが相当である。」

申立人B

「申立人Bは、長期にわたり被相続人夫妻と交流を続け、特に平成14年からは、被相続人自宅の鍵を預かり、比較的高い頻度で被相続人自宅を訪問して家事を行い、被相続人の妻の世話を続けたこと、被相続人の妻死亡時には、被相続人と申立人Bの二人で密葬をしたこと、被相続人の死亡後、その葬儀に参列はしなかったものの、被相続人の遺骨を○○寺に納骨したことなどからすれば、被相続人と申立人Bの関係は、通常の親戚付合いを超えた親密な関係にあったと認められ、また、被相続人が申立人Bに財産の管理処分を託する遺言書を書いた旨伝えていたことからすれば、被相続人は、申立人Bに相当程度の財産を遺す意向を有していたと認められる。これらの事情からすれば、申立人Bにつき、民法958条の3第1項の特別縁故者に該当すると認めるのが相当である。

 もっとも、上記のとおりの被相続人と申立人Bの縁故関係の内容・程度は被相続人と生計を同じくするとか、被相続人の療養看護に努めたというものとは一線を画するものであり、上記認定事実、そのほか本件各記録上認められる諸般の事情を併せて考慮すると、申立人Bに対する分与額は2500万円の限度で認めるのが相当である。」

東京高裁平成26年5月21日決定

 次のように述べて遺産総額約3億7800万円のうち300万円の分与を認めた原審・東京家裁平成25年12月26日審判を維持しました。

「抗告人は、被相続人の従兄であり、被相続人に代わってDの葬儀を執り行っただけではなく、同人の死後は、同人の依頼に基づいて、自宅に引きこもりがちとなり、周囲との円滑な交際が難しくなった被相続人に代わり、被相続人宅の害虫駆除作業や建物の修理等の重要な対外的行為を行い、民生委員や近隣と連絡を取り、緊急連絡先として抗告人の連絡先を伝え、時々は被相続人の安否の確認を行っていた上、被相続人の死亡時には遺体の発見に立ち会い、その遺体を引き取り、被相続人の葬儀も執り行ったものであるから、「被相続人と特別の縁故があった者」に該当すると認めるのが相当である。」

「本件に現れた抗告人と被相続人との縁故関係の濃淡、程度、抗告人が具体的に被相続人に対して行った行動等や、被相続人と父Dとの親子関係の状況等を踏まえるならば、抗告人が被相続人の遺体の発見に立ち会い、その遺体を引き取り、親族として葬儀を執り行ったことや、平成25年×月×日現在における被相続人の相続財産の総額が3億7875万2012円に上るものであったことなどを考慮しても、被相続人の相続財産から抗告人に対して分与すべき財産の額は300万円とするのが相当というべきである。」

特別縁故者と認めなかった事例

東京高裁平成25年4月8日決定

 次のように述べて、相続財産の分与を求める申立てを却下した原審・東京家裁平成25年1月15日審判を維持しました。

「被相続人の財産の形成に抗告人が寄与した事実があったとしても、被相続人には抗告人に財産を遺贈する意思はなかったのであり、それにもかかわらず、抗告人は、全財産を抗告人に遺贈する旨の被相続人名義の本件遺言書を偽造して相続財産を不法に奪取しようとしたのであるから、そのような行為をした抗告人に相続財産を分与することは相当でないというべきである。したがって、抗告人の上記主張を採用することはできない。」

東京高裁平成26年1月15日決定

 次のように述べて、相続財産の分与を求める申立てを却下した原審・東京家裁平成25年11月8日審判を維持しました。

「当裁判所も、抗告人が被相続人の特別縁故者であるとは認められないと判断する。

 一件記録によれば、抗告人は被相続人の従姉の養子であることが認められるところ、抗告人は、被相続人との間に本家と分家として親戚づきあいがあり、被相続人に後事を託されたことがある、被相続人の葬祭や供養等を行うため多額の費用を支出した等主張する。

 しかし、抗告人が被相続人の生前に、特別の縁故があったといえる程度に被相続人との身分関係及び交流があったということができないことは、原審判の「理由」第2の1、2に記載のとおりであり、一件記録によれば、被相続人は婚姻もせず、子もなく、兄弟姉妹も先に亡くなっていることが認められ、また、抗告人が被相続人の死後に被相続人の法要をし、被相続人宅の庭木と草木の伐採、掃除等をし、そのために一定の労力と費用をかけ、今後もこれを継続する意思を有していることが認められるが、生前の身分関係及び交流に、被相続人の境遇及び被相続人の死後の抗告人の貢献を加えて検討しても、抗告人の被相続人との生前の交流の程度に鑑みると、抗告人を被相続人と「特別の縁故があった者」と認めることはできない。」

コメント

 特別縁故者と認められるか否かは微妙な判断となることもありますので上記裁判例をご参照ください。

(弁護士 井上元)

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