相続税申告における税理士の責任に関する裁判例

 税理士に依頼して相続税の申告をしたところ、内容が誤っていたため相続人に損害が生じたとして税理士に対し損害賠償請求がされて争いとなった裁判例をご紹介します。

税理士の責任を肯定した裁判例

東京地判平成7年11月27日判決

 相続人らが税理士に対し、相続税の申告手続を依頼した際に物納による申請手続を依頼したにもかかわらず延納の許可申請をされるなど委任の本旨に反する申告手続をされたとして損害賠償請求を求めた事案です。

 判決は、相続人らが税理士に対して相続税申告手続を依頼するに際し、物納申請手続を依頼したと認定したうえ、かかる依頼を受けたにもかかわらず延納手続をとることは、特に物納の方法によりがたいとか延納が物納より納税義務者らに有利である等の事情がない限り、債務不履行に当たるとし、過少申告加算税、事務手続費用、売却を余儀なくされた土地の路線価と相続税額の差額、延納利子税などが損害であるとして、2億8086円の損害賠償を命じました。

千葉地裁平成9年12月24日判決

 申告における土地の評価が低すぎたため、税務署による税務調査により修正申告を行い、過少申告加算税及び延滞税を賦課されたという事案です。

 判決は、土地を低額に評価して申告した税理士の責任を認めて約350万円の損害賠償を命じ、控訴審の東京高裁平成10年11月9日判決も同判決を維持しています。

東京地裁平成21年9月25日判決

 税理士が相続税の申告を行ったところ、税務署から、相続財産たる土地を0円と評価したこと、相続財産たる借地権を相続財産として計上しなかったこと、税理士費用及び不動産鑑定士費用を債務として計上したことについて不備の指摘を受け、これに応じて修正申告を行った結果、本税差額分以外に、過少申告加算税及び延滞税を賦課された事案です。

 判決は、税理士の注意義務違反を認め、過少申告加算税及び延滞税、弁護士費用が損害であるとして計3677万円の損害賠償を命じました。

東京地裁平成24年1月30日判決

 税理士が相続税の申告を行った後、税務調査を受けて海外に計3億5707万円の資産が存したことが判明し、海外資産を隠ぺいしたとして重加算税を賦課されるとともに、修正申告に際しても海外資産の相続については配偶者の相続税の軽減を受けられなかったため、税理士に損害賠償請求を行った事案です。

 判決は、税理士の債務不履行を認め1億円余りの損害賠償を命じました。

東京地裁平成26年2月13日判決

 相続税の申告に際し、税理士が債務控除について誤ったため、相続人が税理士に対し、延滞税及び過少申告加算税相当額などの損害賠償請求を行った事案です。

 判決は、税理士の債務不履行を認め計2355万円の損害賠償を命じました。

税理士の責任を否定した裁判例

東京地裁平成13年10月30日判決

 税理士が財産評価を誤って高額の納税をした後、税務署長に対して減額更正の嘆願申請をすることを他の税理士に委任することを余儀なくされたとして損害賠償請求がなされた事案です。

 判決は、依頼者が資料提供等の協力をせず、時間的制約がある等の事情のあったとして、相続財産の評価及び相続税申告手続に関し善管注意義務違反があるとは認められないとしました。

東京地裁平成15年9月8日判決

 税理士の説明義務違反及び任務懈怠によって、相続税の計算に配偶者の税額軽減を適用できず、さらにその相続税の延納が許可されなかったなどとして損害賠償請求をした事案です。

 判決は、相続税の申告手続に関し、配偶者税軽減、延納手続及び小規模宅地等の特例について、税理士の説明義務はないとしました。

コメント

 税務の申告に誤りがあった場合には巨額な損害が発生することがあり、税理士の責任をめぐって多くの裁判例が現れています。 

 税理士の方が専門家として十分な注意を払うべきことは当然ですが、依頼者の方も税理士に任せきりにすることなく十分な情報を提供するよう心がける必要があるでしょう。

(弁護士 井上元)

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