他の相続人が預金を使いこんだ場合の争い方

 他の相続人が、被相続人の預金を生前または死後において使いこんでいることが発覚したとのご相談を受けることが多々あります。

 請求する相続人をX、使い込んだ相続人をYとし、相続発生後に使いこんだ場合と相続発生前に使いこんだ場合とに分けて説明しましょう。

相続発生後にYが預金を使いこんだ場合

 最高裁平成16年4月20日判決は次のように述べています。

「相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと解される(最高裁昭和27年(オ)第1119号同29年4月8日第一小法廷判決・民集8巻4号819頁、前掲大法廷判決参照)。したがって、共同相続人の1人が、相続財産中の可分債権につき、法律上の権限なく自己の債権となった分以外の債権を行使した場合には、当該権利行使は、当該債権を取得した他の共同相続人の財産に対する侵害となるから、その侵害を受けた共同相続人は、その侵害をした共同相続人に対して不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができるものというべきである。」

 そして、大阪高裁平成22年8月26日判決は上記最高裁判決を引用して次のように述べています。

「相続人が相続財産中の可分債権につき法律上の権限なく自己の相続分を超える債権を行使した場合には、他の共同相続人は、当該相続人に対し、侵害された自己の相続分につき、不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができる(最判平成16年4月20日、家月56巻10号48頁)のであって」、「Xが相続開始後の預金の支出のうち清算を承諾した部分については遺産分割手続において考慮する余地はあるものの、預金を領得したか否かについて当事者間に争いがある場合には、その確定及び権利行使は民事訴訟を通じてするほかない」

 すなわち、XとYが当該預金の処理につき合意していなければ、Xは遺産分割手続においてYが使い込んだ預金の清算を求めるのではなく、民事訴訟によりYに請求しなければなりません。

相続発生前にYが預金を使いこんでいた場合

 この場合、被相続人はYに対して不法行為に基づく損害賠償請求権もしくは不当利得に基づく返還請求権を有しており、被相続人の死亡によりXとYが当該請求権を相続します。

 この場合の権利関係については上記大阪高裁判決が次のように述べています。

「相続人が相続開始前に被相続人に無断で預金を払い戻して領得していた場合には、被相続人が取得した損害賠償請求権又は不当利得返還請求権が相続人に相続されることになるが、相続財産中の可分債権は法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する(最判昭和29年4月8日、民集8巻4号819頁)のであるから、これを遺産分割の対象とすることについて相続人間に合意がある場合であれば遺産分割の対象とすることができるが、そのような合意がない場合には遺産分割の対象とすることはできないから、その確定及び権利行使は民事訴訟を通じてするほかない。」

コメント

 他の相続人Yが預金を使いこんでいる場合の法律関係は上記のとおりであり、遺産分割手続の中で清算を求めるのか、民事訴訟で請求すべきか、状況に応じて使い分ける必要があります。また、消滅時効についても注意しなければなりません。

 更に、預金使い込みについては、立証の問題もありますので、早期に弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

(弁護士 井上元)

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