遺産分割協議と国税徴収法39条

国税徴収法39条

 国税徴収法39条(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)では次のように規定されています。

「滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定納期限の1年前の日以後に、滞納者がその財産につき行った政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、債務の免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免かれた者は、これらの処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞納者の親族その他の特殊関係者であるときは、これらの処分により受けた利益の限度)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。」

 この法律について争いとなった最高裁判例がありますのでご紹介します。

最高裁平成21年12月10日判決

事案の概要

(1) Aは、昭和62年分以降の所得税、その延滞税等合計11億円余りの国税を滞納していた。

(2) Aの妻であるBは、平成17年5月20日に死亡し、その相続人は、A並びに子である上告人及びCの3名である。

(3) A、上告人及びCは、平成17年6月9日、亡Bの約2億円の遺産について分割の協議(以下「本件遺産分割協議」という。)を成立させ、その結果、Aがその相続分(2分の1)を下回る約2000万円の財産を取得し、上告人がその相続分(4分の1)を上回る約1億2800万円の財産を取得した。

(4) Aは、本件遺産分割協議において、その滞納に係る国税の徴収を免れるとともに、Aの近くに居住してその面倒を見てくれる上告人に多くの財産を取得させることを意図していた。

(5) 関東信越国税局長は、Aが上告人及びCとの間でした本件遺産分割協議は国税徴収法39条にいう第三者に利益を与える処分に当たり、上告人はこれにより約6700万円の利益を受けたとして、平成18年6月19日、上告人に対し、Aの滞納に係る国税の第二次納税義務の納付告知をした。

(6) 上告人は、上記納付告知の取消しを求めた。

判決

「遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであるから、国税の滞納者を含む共同相続人の間で成立した遺産分割協議が、滞納者である相続人にその相続分に満たない財産を取得させ、他の相続人にその相続分を超える財産を取得させるものであるときは、国税徴収法39条にいう第三者に利益を与える処分に当たり得るものと解するのが相当である。なお、所論は、同条所定の第二次納税義務が成立するためには滞納者にいわゆる詐害の意思のあることを要するともいうが、前記事実関係によれば、Aに詐害の意思のあったことは明らかである上、そもそも同条の規定によれば、滞納者に詐害の意思のあることは同条所定の第二次納税義務の成立要件ではないというべきである。そして、前記事実関係の下で、本件遺産分割協議が第三者に利益を与える処分に当たるものとし、上告人について第二次納税義務の成立を認めた原審の判断は、正当として是認することができる。」

事案の説明

 亡Bの遺産相続につき、夫Aの法定相続分は2分の1ですから、遺産2億円のうち、Aは1億円を取得できたはずです。Aは所得税など11億円を滞納していたのですから、本来、Aは1億円を取得して滞納していた所得税などを支払わなければなりません。

 しかし、Aは2000万円しか取得せず、子の1人である上告人がその相続分(4分の1)を上回る約1億2800万円の財産を取得しました。

 そのため、税務署は、Aから1億円の納税を受けることができたはずなのに、2000万円しか納税を受けることができなくなってしまいました。

 そこで、税務署は、国税徴収法39条により、上告人に6700万円の納税通知を行い、最高裁判所もこれを認めたのです。

遺産分割協議と詐害行為取消しに関する最高裁平成11年6月11日判決

 上記最高裁判決は、遺産分割協議と詐害行為取消権(民法424条)についても同様の判断をしています。

「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。けだし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。」

コメント

 上記最高裁判決のとおり、債務を負っている者が相続人となった場合、法定相続分を下回る遺産分割協議を行った場合、これにより利得を受けた他の相続人は国税徴収法39条もしくは詐害行為取消権により財産を取り戻されることがあります。

 ただし、最高裁平成21年12月10日判決の解説では、「もっとも、遺産の分割は、必ずしも相続分どおりに行われるものではなく、「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情」を考慮して行われるものであるから(民法906条)、そのような一切の事情を考慮して行われた遺産分割協議が、保護に値する合理的なものであると認められる場合には、これに国税徴収法39条を適用することは相当ではないといえる。この点は、詐害行為取消権行使の場合にも同様の問題がある」とされていますので、具体的状況に応じた遺産分割の内容次第ということになります。

(弁護士 井上元)

相続の法律相談ご予約

フリーアクセス:0120-967-330(御予約受付:平日 午前9:30~12時、午後1時~ 5:30)

相談予約で夜間・土曜面談対応いたします。

メールでのご予約は24時間受付

土曜相談会のご案内

毎月1回、土曜日に相談会を行います。

初回1時間無料・予約制

詳細はここをクリックしてください

OSAKAベーシック法律事務所

御堂筋線・京阪電鉄淀屋橋駅1分

〒541-0042
大阪市中央区今橋 4 丁目 3 番 6 号
淀屋橋 NAO ビル 3 階

交通至便 淀屋橋駅1分

アクセスマップはこちら

専門家ネットワーク

弁護士
税理士、司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、その他の専門家

Q&A 任意後見入門



任意後見契約締結から終了まで分かりやすく解説しています!