未支給年金と相続

 故夫の相続放棄をした方から、亡夫の未支給年金を受け取ってよいかとの相談を受けることがあります。

 生命保険の場合、受取人に指定されておれば、受取人として取得するものであり、相続によって取得するものではありませんから、相続放棄しても受け取ることができることはよく知られています。

 これに対し、亡夫の未支給年金は、亡夫が健在であったときのものですから、相続放棄しても受け取ってよいか疑問が生じるのです。

未支給年金の仕組み

 年金は、偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の各15日に、2ヶ月分が後払いで支給されます。

 未支給年金の問題を、6月15日に20万円(4月分の10万円と5月分の10万円の合計額)が支給される場合で説明します。

① 5月に死亡された場合、4月分と5月分は6月15日に支給される予定ですが、支給日には死亡されているので受給することができません。これが未支給年金です。

② 6月に死亡された場合、6月15日に支給される20万円は4月分と5月分ですから、6月分が未支給となり、これも未支給年金となります。

〔参考〕

日本年金機構>年金を受けている方が亡くなったとき

未支給年金の相続財産性

国民年金法19条

 国民年金法19条で次のように規定されています(平成28年10月8日時点)。

(未支給年金)

第19条

1項 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。

2項 前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であつたときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となっていた被保険者又は被保険者であつた者の子は、同項に規定する子とみなす。

3項 第1項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその年金を請求していなかつたときは、同項に規定する者は、自己の名で、その年金を請求することができる。

4項 未支給の年金を受けるべき者の順位は、政令で定める。

5項 未支給の年金を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。

 すなわち、1項で「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。」と規定されているとおり、受給要件を満たす遺族が固有の権利として請求するものであり、相続によって取得するものではないのです。

相続放棄との関係

 したがって、未支給年金は相続財産ではなく、相続放棄をしても、遺族が独自に請求して取得すればよいことになります。

 上記の事例で支給停止の手続が間に合わず、亡夫名義の口座に未支給年金が振り込まれても、要件を満たした遺族が取得することに変わりはありませんが、相続発生後に相続人名義の口座から出金することは相続放棄との関係で単純承認したとの疑念が生じ得ますので、なるべく速やかに支給停止の手続をとり、遺族の方が自ら請求することが好ましいと言えるでしょう。

遺産分割との関係

 遺産分割との関係でいいますと、未支給年金は相続財産ではありませんので、遺産分割の対象外となります。

税金の関係

 未支給年金は相続財産ではありませんので、相続税の対象とはなりませんが、一時所得に該当します。

国税庁>未支給の国民年金に係る相続税の課税関係

最高裁平成7年11月7日判決

 上記のことに関しては最高裁平成7年11月7日判決が次のように判示しているところです。

「国民年金法19条1項は、『年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。』と定め、同条5項は、『未支給の年金を受けるべき者の順位は、第一項に規定する順序による。』と定めている。右の規定は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものでないことは明らかである。」

注)平成28年10月8日時点の国民年金法19条は前記のとおりです。

関連記事

コラム「未支給年金に関する仙台高裁平成28513日判決

(弁護士 井上元)

相続の法律相談ご予約

フリーアクセス:0120-967-330(御予約受付:平日 午前9:30~12時、午後1時~ 5:30)

相談予約で夜間・土曜面談対応いたします。

メールでのご予約は24時間受付

土曜相談会のご案内

毎月1回、土曜日に相談会を行います。

初回1時間無料・予約制

詳細はここをクリックしてください

OSAKAベーシック法律事務所

御堂筋線・京阪電鉄淀屋橋駅1分

〒541-0042
大阪市中央区今橋 4 丁目 3 番 6 号
淀屋橋 NAO ビル 3 階

交通至便 淀屋橋駅1分

アクセスマップはこちら

専門家ネットワーク

弁護士
税理士、司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、その他の専門家

Q&A 任意後見入門



任意後見契約締結から終了まで分かりやすく解説しています!