全盲の遺言者の遺言が錯誤無効とされた事例

 全盲の方がなした公正証書遺言が錯誤により無効された事例(さいたま地裁熊谷支部平成27年3月23日判決)を紹介します。

全盲の方が公正証書遺言を作成することができるか?

 この点につき、上記判決は「民法969条3号は、公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせるか、閲覧させることのいずれかを行うことを定めているところ、遺言者が全盲であっても、遺言者が口授し、公証人が遺言の内容を読み聞かせることによってその内容を確認でき、それで足りるというべきであるから(最高裁昭和55年12月4日第一小法廷判決・民集34巻7号835頁参照)、全盲の者が作成した公正証書遺言も、遺言者が口授し、公証人が遺言の内容を読み聞かせれば有効であると解される。」と判示して全盲の方が作成した公正証書遺言も有効であるとしています。

錯誤無効について

 一般に、公正証書遺言が錯誤により無効とされることはあまりありませんが、上記さいたま地裁熊谷支部平成27年3月23日判決は、「遺言は、遺言者の最終的な意思表示であり、しかも死後においては自らその内容、動機等を説明することができないのであるから、錯誤の認定は慎重になされることが必要であるところ、錯誤により遺言が無効とされる場合とは、当該遺言における遺言者の真意が確定された上で、それについて遺言者に錯誤が存するとともに、遺言者が遺言の内容となった事実についての真実を知っていたならば、かかる遺言をしなかったといえることが必要である。」と述べたうえで、次のように判示して遺言は錯誤により無効としました。

① 遺言者の意思は、子らが施設の生活や入院生活費等で金銭を必要とする場合、子らが金銭に困ることのないよう、確実に受贈者により遺言者の所有金から金銭を支出し、遺言者や子らが死亡した場合は、受贈者によりこれらの者の葬儀を執り行ってもらい、遺言者の所有金に残額があれば、残額を受贈者に寄付することにあったものと認められる。

② 子らに生活費等が確実に支払われることが遺言者にとって極めて重要であって、少なくとも受贈者が、子らに対し生活費等を支払う法的義務を負わない(子らは、受贈者が支払を拒んだ場合、生活費が必要であっても支払を強制して求めることができず、任意の履行を期待できるにすぎない。)と認識していれば、本件遺言をしなかったと認められる。

③ 遺言者が全盲であったことや、当時79歳と高齢であったこと、法的知識を十分に有していたと認められないことにも照らせば、遺言者が、本件遺言時、遺言者の死亡後、受贈者が、確実に子らに生活費等を支払ってくれるものとの誤信して本件遺言をしたものと推認できる。

コメント

 上記案件において、受贈者は遺言者が入所していた養護盲老人ホームを経営する社会福祉法人でした。遺言者は、子らの生活等を心配しており、その中で全財産をホームに遺贈するとの遺言は不自然と言われても仕方ありません。

 ホームとしては、遺言者の意向を十二分に配慮すべきだったと言えるでしょう。

(弁護士 井上元)

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