相続税対策におけるデット・エクイティ・スワップの失敗事例

 相続税対策としてデット・エクイティ・スワップ(DES)を利用したところ、会社の債務消滅益を理由とする納税により、税理士の損害賠償責任が認められた事例(東京地判平成28年5月30日判決)があります。

 デット・エクイティ・スワップに関する課税問題が現れていますので、参考のため、ご紹介します。

東京地判平成28年5月30日判決

事案の概要

① X社前代表者は、平成22年4月末の時点で、X社に対し、約11億円の貸金債権を有しており、X社前代表者は顧問税理士Yに対し、相続税対策を相談した。

② Yの提案により、平成23年、X社前代表者は、X社に対する上記貸金のうち9億9000万円を現物出資して、X社の株式の割当を受け、本件DESが実行された。

③ 平成23年11月、X社前代表者が死亡し、その相続人であるX社代表者は、A税理士法人に相続税申告を委任したところ、X社につき本件DESにより貸金債務は消滅し、これによって債務消滅益が発生したことを前提とする修正申告を行うこととし、平成24年11月、当初確定申告に係る法人税等の税額との差額約2億8902万円を納付した。

④ X社は、Yに対し、本来支払う必要のなかった法人税等相当額の損害を被った等と主張して、税務顧問契約の債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償金の支払を求めた。

判決

 Y税理士の損害賠償責任を認め、約3億3000万円もの損害賠償を命じました。

会社法上の取り扱い

 デット・エクイティ・スワップ(DES)とは、企業の債務(デット)を企業の資本(エクイティ)に交換する(スワップ)ことをいい、債権放棄などと同様に、企業の財務再構築の一手法として利用されています。その具体的な方法としては、債権者が債務者企業に現金を払い込んで募集株式の割当を受ける方法(現金払込型)と、現金ではなく債務者に対する債権を現物出資して同様に募集株式の割当を受ける方法(現物出資型)があるようです。

 現物出資型のDESにおいて、資本の増加額を出資する債権の券面額とするか、評価額とするかという議論があったところ、平成12年に東京地方裁判所商事部が券面学説を採用することを明らかにして以来、実務は券面額説でほぼ定着するようになったと言われています。(東京地判平成28年5月30日判決・判例タイムズ1439号233頁の解説参照)

 すなわち、債権者の債務者(会社)に対する貸付金が額面10億円である場合、当該債権の実質的な評価額が5億円であったとしても、検査役による検査は不要となるのです。

法人税法上の取り扱い

 一方、平成18年度税制改正において、会社が現物出資を受けた場合の税務上の取扱いは債権の券面額ではなく時価によるものとされ(法人税法2条16号、同法施行令8条1項)、この結果、現物出資する債権の券面額と時価の差額は債務消滅益として認識する必要があるものとされました。(上記解説参照)

 したがって、法人税法上、上記の事例では、会社には5億円の債務免除益が認識され、法人税が課税されることになります。

 ただし、経営不振企業の再建を目的として行われるDESの趣旨が没却されないよう、会社更生、民事再生等の法的整理においてDESが行われる場合には、DESにより発生する債務消滅益を期限切れ欠損金と相殺することを可能とされています(法人税法59条1項1号、2項1号)。

コメント

 相続税対策にはいろいろな方法があるかと思いますが、一方、複雑な対策に対するリスクも存するとことです。

 相続税対策を行う場合には十二分に注意していただければと思います。

(弁護士 井上元)

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