財産分離とは?

財産分離とは、相続財産と相続人の固有財産とが混合することによって債権者等がその債権の回収について不利益を被ることを防止するため、一定の者(相続債権者・受遺者・相続人債権者)の請求により、相続財産を分離して管理し、清算する手続です(民法941条~950条)。

財産が分離されれば、①相続財産については、相続債権者・受遺者が相続人債権者に対し、優先して引当てとすることができ(民法942条)、②相続人の固有財産については、相続人債権者が相続債権者・受遺者に対し、優先して引当てとすることができます(民法948条)。

財産分離には、相続債権者または受遺者の請求によってされる第1種財産分離と、相続人債権者の請求によってされる第2種財産分離があります。

財産分離制度が用いられることはきわめて稀であるところ、最高裁第三小法廷平成29年11月28日決定の事例が公表されていますのでご紹介します。

最高裁第三小法廷平成29年11月28日決定の事例

事案の概要

一審・大阪家平成29年2月15日審判によると次のような事案です。

① 被相続人は、平成28年11月に死亡し、本件相続財産の分離に関する処分事件は、平成28年12月に申立てがあった。

② 被相続人については、平成27年6月、保佐開始として保佐人にA弁護士を選任し、その後平成28年6月、後見開始として後見人にB弁護士を選任した。

③ 後見人であったBは、後見事務において立て替えた費用等につき被相続人に対し請求権を有する債権者である。債権者としては、保佐人であったA弁護士が保佐事務において立て替えた費用及び報酬につき請求権を有しているほか、被相続人が生前に委任した弁護士が被相続人が当事者となっている民事訴訟に関する弁護士報酬等の請求権を有していると考えられる。

④ 被相続人の財産を生前から事実上管理していた相続人Cは、後見人B弁護士が職務上、被相続人の財産の開示、引渡し等を求めても応じることはなく、被相続人が平成28年11月に死亡したことにより、被相続人の債権者の債権の引当てとなるべき被相続人の財産と相続人が被相続人の相続開始前から有する固有財産(債権の引当てとなる固有の財産を有すると認めることはできない。)とが混合するおそれが生じた。

⑤ そこで、B弁護士は、相続人C及び相続人Dを相手方として、相続財産の分離に関する処分申立てを行った。

大阪家平成29年2月15日審判

分離することを相当と認め、被相続人の相続財産につき財産管理人を職権で選任することとし、申立人であるB弁護士を被相続人の相続財産管理人に選任した。

大阪高裁平成29年4月20日決定

次のように述べて原審判を取り消し、大阪家庭裁判所に差し戻した。

「民法941条1項の定める第1種財産分離は、相続人の固有財産が債務超過の状態にある場合(もしくは近い将来において債務超過となるおそれがある場合)に相続財産と相続人の固有財産の混合によって相続債権者又は受遺者の債権回収に不利益を生じることを防止するために、相続財産と相続人の固有財産を分離して、相続債権者又は受遺者をして相続人の債権者に優先して相続財産から弁済を受けさせる制度である。したがって、家庭裁判所は、相続財産の分離の請求があったときは、申立人の相続債権、申立期間といった形式的要件が具備されている場合であっても、上記の意味における財産分離の必要性が認められる場合にこれを命じる審判をなすべきものと解するのが相当である。

ところで、本件においては、相続人C及び相続人Dについて、その固有財産が債務超過の状態(もしくは近い将来において債務超過となるおそれがある状態)にあるかどうかは明らかではなく、財産分離の必要性について審理しないまま、財産分離を命じた原審の判断は相当でなく、この点について原審においてさらに審理を尽くす必要があるというべきである。

以上によれば、本件については、抗告の理由について判断するまでもなく、原審判を取り消し、大阪家庭裁判所に差し戻すのが相当である。なお、原審判は、財産分離を命じるとともに、甲事件申立人の自薦に基づき同申立人を相続財産管理人に選任しているが、仮に本件が財産分離を命ずべき事案であるとしても、相続財産管理人の職務内容に鑑みれば、相続債権者を相続財産管理人に選任するのは相当でない。」

最高裁第三小法廷平成29年11月28日決定

次のように述べて大阪高裁決定を維持し、抗告を棄却しました。

「民法941条1項の規定する財産分離の制度は,相続財産と相続人の固有財産とが混合することによって相続債権者又は受遺者(以下「相続債権者等」という。)がその債権の回収について不利益を被ることを防止するために,相続財産と相続人の固有財産とを分離して,相続債権者等が,相続財産について相続人の債権者に先立って弁済を受けることができるようにしたものである。

このような財産分離の制度の趣旨に照らせば,家庭裁判所は,相続人がその固有財産について債務超過の状態にあり又はそのような状態に陥るおそれがあることなどから、相続財産と相続人の固有財産とが混合することによって相続債権者等がその債権の全部又は一部の弁済を受けることが困難となるおそれがあると認められる場合に、民法941条1項の規定に基づき、財産分離を命ずることができるものと解するのが相当である。」

コメント

上記事案は、被相続人の後見人であったB弁護士がその後見費用等を確保するために財産分離の申立てを行ったという若干イレギュラーな案件です。高裁決定は「原審判は、財産分離を命じるとともに、甲事件申立人の自薦に基づき同申立人を相続財産管理人に選任しているが、仮に本件が財産分離を命ずべき事案であるとしても、相続財産管理人の職務内容に鑑みれば、相続債権者を相続財産管理人に選任するのは相当でない。」と述べていますが、もしかすると、申立人であるB弁護士が管理人報酬を放棄する意向であったことから選任されたのかもしれません。

手続の煩雑さや費用の問題からほとんど利用されない制度ですが、利用を検討すべき案件もあるかもしれません。

(弁護士 井上元)

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