遺言等無効の主張と遺留分侵害額請求権の不行使

遺言や生前贈与が無効である場合、遺留分は侵害されておらず、また、遺留分侵害額請求権を行使することは矛盾する行動となりますから、遺言無効とともに遺留分侵害額請求権行使の意思表示を行うことには躊躇することがあります。

しかし、遺留分権利者が無効を信じているため遺留分侵害額請求権を行使しなかったことがもっともと首肯しうる特段の事情が認められない限り、遺留分侵害額請求権の消滅時効は進行しますので(最高裁昭和57年11月12日判決)、予備的に遺留分侵害額請求権行使の意思表示を行っておくべきでしょう。

最高裁昭和57年11月12日判決・民集36巻11号2193頁

民法1042条(※現1048条)にいう「減殺すべき贈与があつたことを知った時」とは、贈与の事実及びこれが減殺できるものであることを知った時と解すべきであるから、遺留分権利者が贈与の無効を信じて訴訟上抗争しているような場合は、贈与の事実を知っただけで直ちに減殺できる贈与があったことまでを知っていたものと断定することはできないというべきである(大審院昭和12年(オ)第1709号同13年2月26日判決・民集17巻275頁参照)。しかしながら、民法が遺留分減殺請求権につき特別の短期消滅時効を規定した趣旨に鑑みれば、遺留分権利者が訴訟上無効の主張をしさえすれば、それが根拠のない言いがかりにすぎない場合であっても時効は進行を始めないとするのは相当でないから、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されていて遺留分権利者が右事実を認識しているという場合においては、無効の主張について、一応、事実上及び法律上の根拠があって、遺留分権利者が右無効を信じているため遺留分減殺請求権を行使しなかったことがもっともと首肯しうる特段の事情が認められない限り、右贈与が減殺することのできるものであることを知っていたものと推認するのが相当というべきである。

東京地裁平成27年3月25日判決・判例時報2274号37頁

Xらから遺言無効確認訴訟を委任した弁護士Yが、Xらの遺留分減殺請求権を行使せず、同請求権が時効消滅したことにつき、弁護士YのXらに対する遺留分減殺請求権行使の助言・確認義務違反、消滅時効の助言・説明義務違反などによる債務不履行責任が認められました。

「ところで、訴訟事件に関する行為等の法律事務の専門家である弁護士(弁護士法3条1項参照)は、訴訟追行を委任された場合、その依頼者に対し、当該委任契約に基づく善管注意義務として、訴訟の経過を踏まえ、依頼者の要求の範囲、内容等を変更することが依頼者の利益の保護及び実現に資する場合には、依頼者に対し、その旨の助言を行って検討を求め、依頼者の意向を確認する義務を負うものと解すべきである。

これを本件についてみるに、原告らのAに対する遺留分減殺請求権は、本件遺言書の検認が行われた平成15年7月16日から1年後の平成16年7月16日の経過をもって消滅時効が完成すると解されるところ、前記前提となる事実によれば、遅くとも同年4月22日には、本件遺言無効確認請求訴訟において本件遺言書の筆跡が亡BのものであるというC鑑定の結果が明らかになったのであり、既にその頃には、遺留分減殺請求権の消滅時効期間の満了が迫る中、本件遺言が有効であるとの判決がされる可能性が相当程度生じていたものと認められる。このような場合、原告らとしては、たとえ本件遺言書の偽造を確信していたとしても、その主張が認められずに本件遺言が有効と判断される場合には、遺留分の取得を希望するのが通常であると解されるところであり、本件遺言無効確認請求訴訟における上記の進行状況を踏まえると、原告らから同訴訟の追行を委任された弁護士である被告は、当該委任契約に基づく善管注意義務として、本件遺言が有効と判断された場合において原告らの損失を最小限に抑えて利益を確保するべく、原告らに対し、遺留分減殺請求権を行使することを助言して検討を求め、原告らの意向を確認する義務があったものというべきである。

被告本人尋問の結果(略)によれば、被告は、原告らに対して、原告らのAに対する遺留分減殺請求権を行使するか否かについて助言を行って検討を求め、その意向を確認することをせず、当該遺留分減殺請求権を行使することもなかったことが認められる。
したがって、被告には、原告らに対する遺留分減殺請求権の行使についての意向確認等に係る善管注意義務違反があったものというべきである。」

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