遺産分割

相続が開始した場合、何時、何を、どうすればいいのでしょうか?
まず、遺言の有無を確認してください。遺言があれば、遺言執行の問題となります。
遺言がなければ、相続人調査、財産調査を経て、相続人間で遺産分割を行うことになります。
負債が多く相続放棄を行う場合、3ヶ月以内に行う必要があります。
遺産分割の時期に決まりはありませんが、相続税の申告・納税期限は相続開始から10ヶ月となっていますので、その対応も必要です。
また、遺産分割に際して、特別受益、寄与分、財産の分け方をめぐって相続人間で争いが生じることもあります。
遺産分割についてお困りの方は、当事務所にご相談いただければ、適切な助言、サポートをさせていただきます。

相続の開始

相続は、被相続人が死亡することにより開始します(民法882条)。
通常、被相続人が亡くなったことが問題になることはありませんが(ただし「脳死」の議論があります)、災害で遺体が不明な場合、被相続人が本当に死亡したのかが分からないことがあります。このような場合、相続の開始の有無が問題になります。

認定死亡

認定死亡とは、水難、火災その他の事変によって、死亡したことが確実視される場合に、死体の確認に至らなくても、その取調べをした官公署が死亡地の市町村長に死亡の報告をし、それに基づいて戸籍に死亡の記載をする制度です(戸籍法89条本文)。

認定死亡の場合の相続開始時期

最高裁昭和28年4月23日判決・民集7巻4号396頁は、認定官の認定に基き戸籍法89条の報告により登載されたものと認定すべきであり、かかる場合、反証のない限り戸籍簿登載の死亡の日に死亡したものと認めるべきであるとしています。

認定死亡後に生存が判明した場合

認定死亡は、あくまでも行政手続上の便宜的な取扱いですので、生存の証拠が挙がると当然に効力を失います。

失踪宣告

失踪宣告とは、従来の住所または居所を去った者(不在者)が生死不明となった場合に、一定の手続を経たうえでこの者が死亡したものとみなす制度です(民法30条、31条)。
不在者が生死不明となった状況で従前の私法上の法律関係をそのまま維持されると、利害関係を有する者にとって過酷になる場合があるため、設けられた制度です。

手続

不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができます(民法30条1項)。
戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後またはその他の危難が去った後1年間明らかでないときも、同様です(同条2項)。

効力

30条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなされます(民法31条)。

取消し

失踪者が生存することまたは31条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人または利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならなりません(民法32条1項前段)。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼしません(民法32条1項後段)。
失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失いますが、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負います(民法32条2項)。

裁判例
大阪高裁平成17年12月14日決定・家庭裁判月報58巻9号44頁

不在者が入水自殺をした可能性は否定できないけれど、不在者の当日の具体的な行動は確定することができず、不在者が死亡の原因となるべき危難に遭遇したと認めることができないとし、自殺の場合において危難失踪宣告が認められるためには、不在者が自殺した可能性が高いというだけでは足りず、更に高度の蓋然性が肯定されることが必要であるとされました。

広島高裁平成24年3月14日決定・家庭裁判月報65巻1号66頁

交通事故後、崖から海中に転落するという、死亡の原因となるべき危難に遭遇し、危難から1年以上、生死不明の状態にあるとして失踪宣告が認められました。

東京高裁平成28年10月12日決定・判例タイムズ1441号72頁

積雪している冬山への登山を開始したが帰宅せず、捜索しても見つからなかった事案で失踪宣告が認められました。

コラム

相続人

誰が相続人になるのか?

相続人となるべき者の範囲・順位は民法で決められており、これ以外の者が相続人となることはできません(ただし、遺言で遺贈することにより相続人以外の者に財産を承継させることはできます)。
民法の定める相続人には、配偶者相続人と血族相続人があります。

配偶者相続人

配偶者(夫や妻)は常に相続人になります(民法890条)。
婚姻届出をしていることが必要であり内縁の妻や夫は相続人にはなりません。

血族相続人

血族相続人には順位があり、先順位の血族相続人が存在しないときにはじめて、後順位の血族相続人が相続人となります。

第1順位の相続人

第1順位の相続人は、子です(民法887条1項)。養子も含まれます。胎児も相続については既に生まれたものとみなされますが、死体で生まれたときは生まれたものとみなされません(民法886条)。
夫の死亡後に冷凍保存精子を用いて行われた人工授精により出生した子(死後懐胎子)は、父の相続人とはなりません(最高裁平成18年9月4日・民集60巻7号2563頁)。

第2順位の相続人

第2順位の相続人は、直系尊属です(民法889条1項2号)。
子がいない場合、被相続人の直系尊属(両親や祖父母など)が相続人になります。ただし、子につき代襲相続がおこらないときに相続資格を有することになります。また、親等の異なる直系尊属の間では親等の近い者のみが相続資格を有します(同号ただし書)。

第3順位の相続人

第3順位の相続人は、兄弟姉妹です(民法889条1項3号)。
直系尊属もない場合に被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡している場合には甥・姪までが相続人になります。

代襲相続

相続人となるべき者が相続開始以前に死亡していたり、一定の事由(相続欠格、廃除)により相続権を失ったりした場合に、被相続人について相続が開始したとします。このとき、相続権を失った者の子が生存していて、しかも、この者が被相続人の直系卑属にあたる場合には、この者が相続権を失った者(被代襲者)に代わって、同一順位で相続人となり、相続権を失った者の相続分を承継します(民法887条2項、889条2項)。これが代襲相続です。

子についての代襲相続と兄弟姉妹についての代襲相続
代襲相続が認められる場合

代襲相続が認められているのは、①子が相続人(被代襲者)となる場合(民法887条2項)と、②兄弟姉妹が相続人(被代襲者)となる場合(民法889条2項による887条2項の準用)です。

再代襲相続

子について代襲相続が問題となる場合において、代襲者に直系卑属がいるときには、再代襲相続(再々代襲相続、再々々代襲相続)が可能です(民法887条3項)。
これに対し、兄弟姉妹についての代襲相続の場合には、再代襲相続はできません。兄弟姉妹の代襲相続を定める民法887条2項は、887条2項を準用するだけで、同条3項を準用していないからです。ただし、1980年(昭和55年)12月31日以前に開始された相続については、兄弟姉妹にも再代襲が認められておりましたので、それより以前の相続につき遺産分割未了の事案では注意してください。

代襲原因

代襲原因は、被代襲者の①死亡、②相続欠格、③廃除です(民法887条2項)。
これに対し、相続放棄による相続権の喪失は、代襲原因ではありません。

同時死亡の推定

数人の者が死亡した場合において、そのうちの1人が他の者の死亡後においてなお生存していたことが明らかでないとき、これらの者は、同時に死亡したものと推定されます(民法32条2)。同時死亡の場合、互いに相続しません。
事故などで同時に死亡したと推定される場合には注意してください。

コラム

相続欠格

被相続人が亡くなれば相続が開始し、原則として民法上定められた者が相続人になります。しかし、中には相続人として被相続人の財産を承継させるのが不適切な者もいます。民法では、一定の事情がある場合に、法律上当然に相続人の資格を失わせて、被相続人の財産を承継させないようにしています。これが、相続欠格制度です。

欠格事由

民法891条で次の5つの欠格事由が定められています。

1号

故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者

2号

被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、または殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であったときは、この限りではありません。

3号

詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、または変更することを妨げた者

4号

詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者

5号

相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者

5号で多く問題となっているのが「破棄・隠匿」です。最高裁平成9年1月28日判決・民集51巻1号184頁は、相続人による遺言書の破棄・隠匿行為が「相続に関して不当な利益を目的とする」ものでないときは、相続欠格者にあたらないとしています。

相続欠格の効果

相続欠格事由に該当する者は、当然に相続資格を失います(民法891条)。相続人の廃除のような家庭裁判所での手続きは不要です。
相続欠格者に、当該被相続人の直系卑属がいたときは、代襲相続されます(民法887条2項)。
相続欠格の規定は、遺贈を受ける資格(受贈欠格)で準用されています(民法965条による891条の準用)。

相続欠格を主張する方法

どのような方法で相続欠格を主張し、確定することができるのでしょうか?欠格者の同意が得られない場合の方法を説明します。

相続人の地位を有しないことの確認を求める訴え

相続欠格事由があるため当該者には相続権がないことを確定させせるためには、当該者には相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えを提起することができます。
相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは、固有必要的共同訴訟であり、相続人全員で行う必要があります(最高裁平成16年7月6日判決・民集58巻5号1319頁)。

相続回復請求権の行使

相続欠格事由が判明しないで遺産分割がされたときは、「非相続人による相続権の侵害」であり、他の相続人は、相続回復請求権(民法884条)に基づき、相続欠格者が取得した財産の返還を求めることができます。
欠格者が第三者に対して遺産を譲渡しても、無権利者の処分となりますから、第三者は保護されません。

コラム

相続人の廃除

相続人の廃除とは?

相続人の廃除とは、被相続人の意思により、家庭裁判所が推定相続人の相続資格を奪う制度です。被相続人と推定相続人との間の人的信頼を破壊した者に対する民事制裁であるとされています。
例えば、親Aが「子Bは自分を虐待したから、子Bに財産を残したくない」と考えて全財産を別の子Cに渡すとの遺言を作成しても、子Bには遺留分がありますから、子Bが遺留分侵害額請求権を行使すると、子Bに遺留分相当の財産を渡さざるをえません。この場合、子Bの廃除が認められれば、子Bの相続権を喪失させることができるのです。

廃除対象者

廃除は、遺留分を有する推定相続人(配偶者、子、直系尊属)についてのみ認められます。遺留分を有しない推定相続人(兄弟姉妹)については、遺言により自己の財産をその者に渡さないようにすれば足りるからです。

廃除事由

民法では2つの廃除事由を定めています(民法892条)。

被相続人に対する虐待または重大な侮辱

虐待や侮辱は人的信頼関係を破壊する程度に重大なものでなければなりません。

著しい非行

著しい非行とは、犯罪、遺棄、被相続人の財産の浪費、不貞行為、素行不良など、虐待・重大な侮辱という行為類型に該当しないものの、それに類する行為です。推定相続人の遺留分を否定することが正当であると評価できる程度の非行でなければなりません。

廃除の方法

生前廃除

被相続人が、廃除対象者を示して家庭裁判所に請求する方法です(民法892条)。
被相続人が自己の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所は、被相続人の宥恕、相続人の改心等の諸般の事情を総合的に考慮して、後見的立場から、廃除事由に該当する事実の有無を審理し、廃除をするのが相当であるか否かを決定します(最高裁昭和55年7月10日決定・判例タイムズ425号77頁、最高裁昭和59年3月22日決定・判例タイムズ524号203頁)。

遺言廃除

被相続人が遺言で廃除をする方法です(民法893条)。
遺言が効力を生じた後、遺言執行者が遅滞なく相続開始地を管轄する家庭裁判所に排除の申し立てをし、家庭裁判所は、被相続人の被相続人の宥恕、相続人の改心等の諸般の事情を総合的に考慮して、後見的立場から、廃除事由に該当する事実の有無を審理し、廃除をするのが相当であるか否かを決定します。
広島高裁平成3年9月27日決定・家庭裁判月報44巻5号36頁は、「私の現在の財産年金の受給権はYには一切受け取らせないようお願いします」との自筆証書遺言は、Yを推定相続人から廃除する意思を表示したものと解するのが相当であるとしています。

廃除の効果

廃除を求める審判が確定することにより、廃除対象者は相続資格を喪失します。

戸籍の届出

この後、廃除申立者の届出を経て、審判の確定日が戸籍に記載されますが(戸籍法97条による63条1項の準用)、この届出は報告的届出です(東京高裁昭和60年3月7日判決・判例時報1152号138頁)。尚、相続欠格では公示されません

効果発生時

生前廃除の効果は、審判の確定によって生じます。
遺言廃除の効果は、相続時にさかのぼって生じます(民法893条後段)。したがって、相続開始後・審判確定前に被廃除者がした相続財産の処分は、相続開始時にさかのぼって無権利者の処分となります。その結果、遺産である不動産を被廃除者から譲り受けた者や、遺産である不動産について被廃除者に代位をして相続登記をし、その持分を差し押さえた者は、民法177条の「第三者」ではなく、登記をもって対抗できません(大阪高裁昭和59年3月21日判決・判例タイムズ527号108頁)。

代襲相続が適用される

被廃除者に当該被相続人の直系卑属がいたときは、相続欠格の場合と同様に、代襲相続が開始します(民法887条2項)。したがって、親の遺産は、廃除された子を飛ばして、孫に相続されることになります。

廃除の取消し

被相続人は、いつでも、廃除の取消しを、その住所地を管轄する家庭裁判所に請求することにより、廃除を取り消すことができます(民法894条)。

廃除の審判確定前の暫定的処理

廃除の審判が確定する前に相続開始があった場合の暫定的処理として、家庭裁判所は、親族、利害関係人または検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分(相続財産管理人の選任など)を命じることができます(民法895条)。

コラム

相続分

法定相続分

相続分とは、遺産に対する各相続人が持つ抽象的な割合のことをいいます。
遺産分割協議や調停による話し合いがまとまらない場合、最終的に家庭裁判所が審判というかたちで遺産分割を行いますが、審判による場合には法定相続分通りに分割されます。
これに対し、遺産分割協議や調停による話し合いで分割する場合には法定相続分通りに分割する必要はなく、例えば、ある相続人が財産を全く取得しないことも可能です。

法定相続分の規定

法定相続分は次のように定められています(民法900条)。

1号(配偶者と子)

子と配偶者(妻や夫)が相続人であるときは、子の相続分および配偶者の相続分は各2分の1となります。

2号(配偶者と直系尊属)

配偶者および直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1となります。

3号(配偶者と兄弟姉妹)

配偶者および兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1となります。

4号(複数人の場合と半血きょうだい)

子、直系尊属、兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は等しくなります。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となります。

相続人および法定相続分の具体例

少々複雑かもしれませんので具体的に説明してみましょう。

  1. 妻と子(1人)がいる場合には妻と子(1人)が相続人となり、法定相続分は妻が2分の1、子が2分の1となります。子(2人)の場合には、妻が2分の1、子(2人)が各4分の1となります。子が被相続人よりも先に死亡しており孫がいる場合には孫が子を代襲して相続人となります。
  2. 子がおらず、妻と父母がいる場合には、妻と父母が相続人となり、法定相続分は妻が3分の2、父母が各6分の1(計3分の1)となります。
  3. 妻がおらず、子(1人)、父母、兄弟姉妹がいる場合、子(1人)が先ず相続人になりますので、子(1人)が全てを相続します。子(2人)の場合には各2分の1を相続します。子がいない場合には父母が、父母がいない場合には兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡している場合、甥・姪がいれば甥・姪も相続人になります。甥・姪も死亡している場合には甥・姪の子供は相続人にはなりません。
  4. 妻、子、父母などがおらず兄弟姉妹が相続人となる場合、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(いわゆる半血きょうだい)の相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となります。
    妻が被相続人よりも先に死亡している場合、妻の連子(被相続人と養子縁組をしている場合は別です)、妻の父母、妻の兄弟姉妹などは相続人にはなりません。

指定相続分

被相続人は各相続人の相続分を遺言によって指定することができます(民法902条1項)。また、被相続人は、遺言で相続分の指定を第三者に委託することができます。これを指定相続分といいます。遺言により相続分が指定されている場合、法定相続分ではなく、指定相続分によります。

相続分の譲渡

相続分の譲渡とは?

共同相続人の1人は、自己の相続分を、相続人以外の第三者に譲渡することができます(民法905条1項)。
相続分の譲渡とは、相続開始後・遺産分割前に行われる「積極財産と消極財産とを包含した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分」(包括的持分)を移転のことを言います(最高裁平成13年7月10日判決・民集55巻5号955頁)。

相続債務について

相続債務も譲受人に移転しますが、債権者には対抗できません。債権者から請求されることになりますので、相続放棄と異なります。

相続分譲渡の方法

相続分の譲渡は、遺産分割より前であれば、有償・無償を問わず、また、口頭によるものでもかまいません。
相続分の譲渡については公示方法がありません。したがって、相続分が二重に譲渡された場合は、先にされた譲渡が優先します。

共同相続人の1人に対する相続分譲渡

相続分の譲渡は、共同相続人の1人に対してすることもできます。相続人の1人に対して相続分の譲渡がされた場合は、「譲受人は従前から有していた相続分と新たに取得した相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割に加わることとなり、分割が実行されれば、その結果に従って相続開始の時にさかのぼって被相続人からの直接的な権利移転が生ずることになる。このように、相続分の譲受人たる共同相続人の遺産分割前における地位は、持分割合の数値が異なるだけで、相続によって取得した地位と本質的に異なるものではない。そして、遺産分割がされるまでの間は、共同相続人がそれぞれの持分割合により相続財産を共有することになる」とされています(最高裁平成13年7月10日判決・民集55巻5号955頁)。

相続分の取戻し

共同相続人の1人が自己の相続分を第三者に譲渡したとき、他の共同相続人は、価額と費用を償還して、譲渡された相続分を第三者から取り戻すことができます(民法905条1項)。相続分の取戻しの制度は、第三者が遺産分割に介入することを防ぐための制度です。
相続分の取戻権は、1ヶ月以内に行使しなければなりません(同条2項)。

相続分の放棄

相続放棄は、相続開始後、家庭裁判所に相続放棄の申述をして行うものであり、相続放棄すると、相続人ではなかったことになって、積極財産を取得することもありませんし、消極財産(債務)を負うこともなくなります。
これに対し、「相続分の放棄」とは、遺産分割手続の中で「自分は財産はいらない」と言って放棄することです。遺産分割調停・審判の手続の途中であっても、相続分を放棄してこれらの手続から脱退することができます。家事事件手続法43条1項では「家庭裁判所は、当事者となる資格を有しない者及び当事者である資格を喪失した者を家事審判の手続から排除することができる。」と規定されており、相続人を譲渡した者は遺産分割手続から排除されることになります。

放棄された相続分の分配

相続分の放棄がされると、放棄者の持分であった相続分は、持分の放棄を定めた民法255条の法意に照らして、他の共同相続人の各自の相続分の割合に従って分配され、各共同相続人に帰属します。この点、相続放棄と異なりますので注意が必要です。
他の特定の相続人の相続分を増やしたいのであれば、相続分の譲渡を行う必要があります。

相続分の放棄と相続債務

注意しなければならないのは、相続放棄とは違って、相続債務の負担を免れることができないことです。すなわち、債権者からすると、相続分の放棄をした者に対しても、相続分に応じた債務の履行を求めることができるのです。

コラム

特別受益

特別受益とは?

例えば、長男だけが亡父の生前に事業資金としてまとまった金額をもらっていた場合、これを度外視して、亡父の死亡時に残されている財産だけを相続分にしたがって遺産を分割することは不公平です。
そこで、民法は、共同相続人の中に、被相続人の生前、婚姻または養子縁組のために贈与を受けた者があるとき(持参金、嫁入道具、支度金など)、生計の資本として贈与を受けた者があるとき(商売の資金を出してもらったり、住宅を建ててもらったなど)、これらの贈与を受けた財産も相続財産とみなし、特別な受益を得た相続人は相続の前倒しとして取得したものとみなすこととしました(民法903条)。これを「特別受益の持戻し」といいます。
特別受益の計算により、相続人間の公平が図られるのです。

特別受益となるもの

次のものが特別受益とみなされます(民法903条1項)。

遺贈

遺贈とは、遺言によって遺言者の財産の全部または一部を無償で相続人等に譲渡することです。遺贈は、その目的にかかわらず、包括遺贈も特定遺贈もすべて特別受益となります。「相続させる」旨の遺言があった場合も同様です。

婚姻・養子縁組のための贈与

婚姻・養子縁組のための贈与は一般的には特別受益に当たるとされていますが、その価額が少額で、被相続人の資産および生活状況に照らして扶養の一部と認めらえる場合には、特別受益とならないと解されています。
結納金は相手の親に対する贈与、挙式費用は親(被相続人)がみずからのために費やした費用と考えられるため、一般的には特別受益にはならないとされています。

生計の資本としての贈与

生計の資本としての贈与とは、広く、生計の基礎として有用な財産上の給付のことです。もっとも、その贈与が生計の資本となりうるものの、被相続人の財産状態に照らして夫婦間の生活保持義務、親族間の扶養義務の範囲内のものであると評価できる場合は特別受益には当たりません。

相続人が受益者であること

特別受益が問題となるのは、被相続人から利益を得たのが相続人である場合のみです。

贈与の価額の算定基準時

贈与を持ち戻す場合、加算すべき贈与の価額は、相続開始時の現状で評価されます。
金銭の場合には贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算して評価されますし、不動産の場合には相続開始時の時価で評価されます。

最高裁昭和51年3月18日判決・民集30巻2号111頁

被相続人が相続人に対しその生計の資本として贈与した財産の価額をいわゆる特別受益として遺留分算定の基礎となる財産に加える場合に、右贈与財産が金銭であるときは、その贈与の時の金額を相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもつて評価すべきものと解するのが、相当である。けだし、このように解しなければ、遺留分の算定にあたり、相続分の前渡としての意義を有する特別受益の価額を相続財産の価額に加算することにより、共同相続人相互の衡平を維持することを目的とする特別受益持戻の制度の趣旨を没却することとなるばかりでなく、かつ、右のように解しても、取引における一般的な支払手段としての金銭の性質、機能を損う結果をもたらすものではないからである。

贈与財産の滅失または価額の増減

贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、またはその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなして定められます(民法904条)。

持戻し免除

被相続人が、持戻し免除の意思表示をしたときは、その意思に従います(民法903条3項)。すなわち、持戻し免除の意思表示がある場合には持戻す必要はありません。
持戻し免除の意思表示は、明示的になされておらず、黙示的であってもかまいません。

婚姻期間20年以上の夫婦間で行った居住用不動産の贈与等~平成30年相続法改正~

婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物またはその敷地について遺贈または贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈または贈与について持戻し免除の意思表示をしたものと推定されます(民法903条4項)。この規定は2018年(平成30年)の改正で新設されたものです。
贈与者の意思としては、配偶者に対し、相続分とは別枠で取得させる意思を有していたものと推定されるからです。
これは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭贈与がなされたときに、基礎控除のほかに最高2000万円まで控除できるとする税法上の特例(相続税法21条の6)と平仄をあわせるものです。

コラム

寄与分

寄与分とは?

共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときは、寄与した者は、寄与にかかる相当する財産を別枠で取得できるものとされています(民法904条の2)。これを寄与分といいます。
例えば、長男が長年にわたり亡父の家業を手伝ってきたにもかかわらず、正当な報酬が支払われていないなどという場合、これを評価しないまま、遺産を単純に相続分により分割しますと、不公平な結果になってしまいます。寄与分は、これを評価して相続人間の公平を図るための制度です。

寄与分と遺贈

寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません(民法904条の2第3項)。

寄与の態様

特別の寄与

寄与分として考慮されるためには、その寄与が「特別の寄与」であると評価されるものでなければなりません。被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える特別の貢献をしたことが求められるのです。

寄与の無償性

「特別の寄与」と言えるためには、寄与行為に対する対価や補償を受けていないことを要します。

「被相続人の財産の維持・増加」への寄与

寄与分として考慮されるためには、「被相続人の財産の維持・増加」についての寄与でなければなりません。

相続人の寄与

寄与分として評価されるのは、「相続人の寄与」についてのみです。
この点、平成30年相続法改正により特別寄与者による特別寄与料の請求権の制度が新設されました(民法1050条)。

寄与分の決定-審判事項

寄与分は共同相続人の協議で決定されますが、協議が調わないときは、寄与をした者の請求により、家事調停を行い、調停不成立の場合には家庭裁判所の審判により決定されます。家庭裁判所は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定めます(民法904条の2第2項)。
寄与分の請求は、遺産分割手続の中でしなければならず、遺産分割後の寄与分の主張は認められません。

具体的相続分の算定

特別受益や寄与分がある場合における具体的な相続分の算定方法を簡単な事例で説明しましょう。
親が死亡し、子であるA、B、Cが相続人であり、計1億2000万円の財産が残されたとします。特別受益や寄与分を算定しなければ、A、B、Cの法定相続分は各3分の1ですから、各自4000万円ずつ相続により取得することになります。
しかし、Aが亡父の生前に事業資金として3500万円の贈与を受けていた場合、Aはこの3500万円を特別受益として持ち戻す必要があります。
一方、Aが長年亡父の療養看護につとめて亡父の財産を維持したことによる評価が500万円としますと、この500万円を寄与分として別枠で取得できることになります。
そうすると各人の実際の取得価額は次のとおりとなります。

Aの取得額

500万円(寄与分)+1億5000万円(1億1500万円と3500万円の合計額)×1/3-3500万円(特別受益)=2000万円

Bの取得額

1億5000万円(1億1500万円と3500万円の合計額)×1/3=5000万円

Cの取得額

1億5000万円(1億1500万円と3500万円の合計額)×1/3=5000万円

配偶者居住権

平成30年相続法改正により、配偶者居住権の制度が新設されました。
配偶者居住権には、配偶者短期居住権(民法1037条~1041条)と配偶者居住権(民法1028条~1036条)の2種類あります。

配偶者短期居住権

配偶者は、相続開始時に被相続人の建物(居住建物)に無償で住んでいた場合、夫が死亡した後、当然に建物での居住を続けることができるとは限りません。
それでは配偶者に酷なので、最高裁平成8年12月17日判決・民集50巻10号2778頁は「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。」と判示し、配偶者の保護を図ってきました。
上記最判は、被相続人との間における使用貸借契約の成立を推認させるとして保護したのですが、①被相続人が第三者に居住建物を遺贈した場合、②被相続人が反対の意思表示をした場合、には使用貸借契約の成立が推認されませんので、配偶者の居住が保護されません。
そこで、被相続人が建物に居住していた場合には被相続人の意思にかかわらず配偶者の居住を一定期間保護するものとしたのです(民法1037条~1041条)。

居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合

①遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間、または②相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間、引き続き無償でその建物を使用することができます。

遺贈などにより配偶者以外の第三者が居住建物の所有権を取得した場合や、配偶者が相続放棄をした場合など

居住建物の所有権を取得した者は、いつでも配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができますが、配偶者はその申入れを受けた日から6か月を経過するまでの間、引き続き無償でその建物を使用することができます。

配偶者による使用
  • 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければなりません。
  • 配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができません。
  • 配偶者が上記に違反したときは、居住建物取得者は、配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができます。
配偶者の死亡による消滅

配偶者短期居住権は、その存続期間満了前であっても、配偶者が死亡したときには消滅します。

配偶者居住権

(事例)
当事者:被相続人は夫A、相続人は妻Wと子A
遺産の構成:①自宅(2000万円)、②預貯金(3000万円)

これまで、上記事例ですと、法定相続分に従った場合、妻Wの相続分は2分の1ですから、2500万円を取得できることになります。しかし、妻Wが自宅を取得しますと、預貯金は500万円しか取得できず、今後の生活費に不足する可能性があります。
そこで、配偶者は、自宅での居住を継続しながら、その他の財産も取得できるようにしたのです。
具体的には、上記の事例では、①自宅を配偶者居住権(評価額1000万円とします)と負担付所有権(評価額1000万円とします)に分け、②妻Wが配偶者所有権(1000万円)と預貯金(1500万円)を取得し、③子Aは負担付所有権(1000万円)と預貯金(1500万円)を取得することができるようにされたのです。

遺産分割

遺産分割における選択肢の一つとして配偶者に配偶者居住権を取得させることができます。
遺産分割協議で行うこともできますし、遺産分割協議がととのわない場合、家庭裁判所は審判で配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることもできます。

遺贈等

被相続人の遺贈・死因贈与によって配偶者に配偶者居住権を取得させることができます。

配偶者居住権の存続期間

配偶者の終身の間が原則ですが、遺産分割協議もしくは遺言で別段の定めがあるとき、または家庭裁判所が遺産分割審判で別段の定めをしたときは、その定めによります。
期間満了により配偶者居住権は終了し、配偶者居住権が認められた配偶者が死亡したとき、配偶者居住権は消滅します。

配偶者居住権の登記

居住建物の所有者は、配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。

特別寄与者による特別寄与料

相続人以外の者による寄与の評価

例えば、被相続人A、相続人は子Xと子Yであり、AはXおよびXの妻Bと同居し、BがAの介護をしていたケースにおいて、Aが死亡した後の相続に際し、Bの貢献はどのように評価されるのでしょうか?
従来、このようなBの貢献は、相続人Xの補助者として貢献したものであり、遺産分割においては、Xの寄与分(民法904条の2)として考慮されてきました。
しかし、それでは、寄与したB自身が財産を取得することはできません。また、XがBより先に死亡した場合、Bは何も取得できません。

特別寄与者による特別寄与料の請求権~平成30年相続法改正

このような不都合を解消するため、平成30年相続法改正により特別寄与者による特別寄与料の請求の制度が創設されました。

特別寄与者による特別寄与料の請求

相続人以外の被相続人の親族である者が、被相続人に対し、無償、療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合、相続人に対して特別寄与料を請求することができます(民法1050条1項)。

手続

特別寄与料の支払いについて当事者間で協議が調わないとき、特別寄与者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分をすることができます(民法1050条2項)。

期間制限

特別寄与者が相続の開始および相続人を知ったときから6ヶ月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過したときは、請求することができなくなります(民法1050条2項ただし書)。

特別寄与料の算定方法

家庭裁判所は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定めます(民法1050条3項)。特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません(同条4項)。

請求の相手方

相続人が数人ある場合には、各共同相続人は、特別寄与料の額に当該共同相続人の相続分を乗じた額を負担しますので(民法1050条5項)、個別に請求する必要があります。
施行期日
2019年(令和元年)7月1日以降に開始した相続から適用されます。

寄与分との関係

特別寄与料の制度が新設されたことにより、上記の事例で、遺産分割手続において、XはBの貢献をXの寄与分として主張できるのでしょうか?
この点については、特別寄与者による寄与に関しては、Xの寄与分は主張できないとする見解と、主張できるとの見解があり、立法過程では明らかにされていない模様です。
したがって、特別寄与者による特別寄与料の請求が可能であるなら、この請求を行うべきであると思われます。
また、立法過程において、寄与分の場合の「特別の寄与」は寄与の程度が被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度の貢献を超える高度なものと解されていることに対し、特別寄与料の場合の「特別の寄与」は貢献の程度が一定程度を超えることを要求する趣旨である説明されており、寄与分よりも特別寄与料の方が認められやすい可能性もあります。

相続財産

相続財産の範囲

相続財産には、積極的財産と消極的財産(負債)があります。また、相続財産にならないものもあります。
相続財産の調査は、遺産分割の話し合いはもとより、相続放棄の検討のためにも必要ですので、正確に行わなければなりません。

積極的財産
  1. 不動産
    土地、建物です。
  2. 不動産上の権利
    借地権、借家権、地上権などです。
    ただし、公営住宅の使用権は相続性が否定されています(最高裁平成2年10月18日判決・民集44巻7号1021頁)。
    被相続人に相続人がいない場合、建物賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者による建物賃借権の承継の制度があります(借地借家法36条)。
  3. 現金
    現金は当然に分割されず、遺産分割が必要です(最高裁平成4年4月10日判決・判例タイムズ786号139頁)。
  4. 預貯金
    預貯金については、従来、可分債権であり相続分に従い当然に分割されるとされていましたが、判例変更により、当然に分割されず遺産分割を要するとされました(最高裁平成28年12月19日判決・民集70巻8号2121頁)。
  5. 株式・投資信託受益権・国債・委託者指図型投資信託の元本償還金
    株式・投資信託受益権・国債(最高裁平成26年2月25日判決・民集68巻2号173頁)、委託者指図型投資信託の元本償還金(最高裁平成26年12月12日判決・判例タイムズ1410号66頁)も当然に分割されず遺産分割が必要です。
  6. 動産
    車、家財道具、美術品などです。
  7. 税金の還付請求権
    税金の還付請求権も相続財産になります(最高裁平成22年10月15日判決・民集64巻7号1764頁)。
  8. その他
    ゴルフ会員権、著作権、特許権などがあります。
消極的財産(負債)
  1. 借金
    相続により承継するのは財産だけではなく、債務も含まれます。
    被相続人が負担していた金銭債務のうち、可分債務であるものは、法律上当然に相続分に従い分割され、各相続人に帰属します(最高裁昭和34年6月19日判決・民集13巻6号757頁)。
    協議分割・調停分割の際に共同相続人が同意すれば、これを遺産分割の中に取り込んで特定の相続人が債務を引き受ける旨の分割をすることは可能です(免責的債務引受)。ただし、相続債権者は、各共同相続人に対し、その法定相続分の割合で権利を行使することができます。
  2. 賃料債務
    相続開始前に発生している未払賃料債務は、他の借金等と同様に相続分にしたがって当然に分割され、各相続人は分割された債務のみを支払えばよいことになります。
  3. 公租公課
    未払の所得税、住民税、固定資産税などです。
  4. 連帯債務・保証債務
    最高裁昭和34年6月19日判決・民集13巻6号757頁は、連帯債務者の1人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解すべきであるとしました。
  5. その他
    未払の医療費、預かり敷金などがあります。

当然分割される金銭債権

損害賠償請求権、貸金債権、不動産賃料債権などの金銭債権(預貯金を除く)は可分債権であり、遺産分割の手続を待つまでもなく、法律上当然に相続分に従い分割され、各共同相続人に帰属します(最高裁昭和29年4月8日判決・民集8巻4号819頁、最高裁平成17年9月8日判決・民集59巻7号1931頁)。
被相続人が交通事故により死亡した場合の加害者に対する損害賠償請求権については、精神的損害についても相続が認められています(最高裁昭和42年11月1日・民集21巻9号2249頁)。
ただし、遺産分割にあたり、共同相続人全員が同意すれば、これを遺産分割の対象財産に取り込んで分割の対象とすることができます。(福岡高裁平成8年8月20日決定・判例タイムズ939号226頁)。

預貯金債権

預貯金債権は金銭債権ですが、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることなく、遺産共有の対象となり、遺産共有に服する他の財産とともに、遺産分割を経て各相続人に承継されます(最高裁平成28年12月19日判決・民集70巻8号2121頁、最高裁平成29年4月6日判決・金融法務事情2064号6頁)。
したがって、共同相続人の1人は、他の共同相続人の全員とともに払戻しの請求をするか、遺産分割を経て、みずからが取得した預貯金債権の額につき払戻しを請求することになります。

預貯金債権の仮分割および一部行使の制度

しかし、これでは、被相続人の葬儀の費用、生前の医療費、公租公課などの支払のため被相続人の預金から支出しようとする場合や、被相続人により実際に生計面での支援を受けていたために、被相続人の死亡後にも遺産から生活費を支出しようとする場合にも預貯金を引き出すことができないという不都合が生じます。
そこで、2018年(平成30年)相続法改正により次の手当がされました。

家事事件手続法の保全処分(仮処分)の要件緩和

預貯金債権の仮分割の仮処分については、家事事件手続法200条2項の要件(事件の関係人の急迫の危険の防止の必要があること)が緩和され、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときは、他の共同相続人の利益を害しない限り、申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部または一部を仮に取得させることができることとされました(家事事件手続法200条3項)。

家庭裁判所の判断を経ない預貯金の払戻し

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち、その「相続開始の時の」債権額の3分の1に当該相続人の法定相続分を乗じた額については、他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しを受けることができます(民法909条の2前段)。
ただし、同一の金融機関に対する権利行使は、法務省令で定める額(150万円)が限度とされています。
従来は相続開始により当然分割されると解されていたものの、実務上、金融機関は訴訟提起しない限り払戻しに応じないという取扱いが通例でしたので、この制度により、3分の1の範囲ではありますが、逆に、払戻しを受けやすくなったともいえます。

相続の対象とならないもの~帰属上の一身専属権

次の権利は帰属上の一審専属性があり相続の対象とはなりません。ただし、⑦~⑩については、一定額の給付請求権として具体化していた場合には、一身専属性が消滅して、相続されることになります。

  1. 代理権(民法111条1項)
  2. 使用貸借における借主の地位(民法597条3項)
  3. 雇用契約上の地位(民法625条)
  4. 組合員の地位(民法679条)
  5. 配偶者居住権(民法1036条による597条3項の準用)
  6. 配偶者短期居住権(民法1041条による597条3項の準用)
  7. 婚姻費用分担請求権
  8. 扶養請求権(最高裁昭和54年7月19日決定・判例タイムズ399号129頁)
  9. 生活保護法に基づく保護受給権(最高裁昭和42年5月24日判決・民集21巻5号1043頁)
  10. 離婚の際の財産分与請求権

受取人固有の権利であるもの

生命保険金請求権
特定の人が保険金受取人に指定されていたとき

特定の人が保険金受取人に指定されていたときは、その者が、保険契約から生じる固有の権利として保険金請求権を取得します。したがって、相続放棄しても取得することができます。
保険金受取人を単に「相続人」としていた場合、特段の事情がなければ、「保険金請求権発生時点つまり被保険者死亡時点の相続人たる個人」を保険金受取人として指定した保険契約であると解され、この場合も、保険金請求権は相続人の固有財産となり、相続財産には属しません(最高裁昭和40年2月2日判決・民集19巻1号1頁、最高裁昭和48年6月29日判決・民集27巻6号737頁、最高裁平成16年10月29日判決・民集58巻7号1979頁)。
保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合は、特段の事情のない限り、この指定には相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれ、各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になります(最高裁平成6年7月18日判決・民集48巻5号1233頁)。保険契約者が保険金受取人を指定していないが、生命保険約款中に「指定のないときは、保険金を被保険者の相続人に支払う」との条項があった場合も同様です。
ちなみに、神戸地裁尼崎支部平成26年12月16日判決・判例時報2260号76頁は、他の相続人が相続放棄に加えて保険金請求権の放棄または受取拒絶の意思表示をしたとしても、特段の事情がない限り、これによってその者の保険金請求権が相続放棄をしなかった他の法定相続人に帰属するとも被保険者の相続財産に帰属するともいえないとしています。
なお、相続税との関係では、保険金受取人が「相続人」である場合は、保険金を相続によって取得したものとみなして、相続税が課税されます。

被相続人自身が受取人に指定されていた場合

被相続人自身が受取人に指定されていた場合は、相続財産に含まれます。

保険金受取人に指定された者が死亡した場合

生命保険契約で、保険事故が発生する前に保険金受取人に指定された者が死亡したとき、保険契約者は、保険者に対する意思表示によって保険金受取人の変更をすることができますが(保険法43条)、この変更をすることなく、保険契約者が死亡したときは、保険金受取人の「相続人の全員」が保険金受取人になります(保険法46条)。
この場合に保険金受取人が複数いるとき、複数の保険金受取人は民法427条により平等の割合で保険金請求権を取得します(最高裁平成4年3月13日判決・民集46巻3号188頁、最高裁平成5年9月7日判決・民集47巻7号4740頁)。

死亡退職金

死亡退職金は、受取人の固有財産であって、相続財産には属しません(最高裁昭和55年11月27日判決・民集34巻6号815頁、最高裁昭和58年10月14日判決・判例タイムズ532号131頁、最高裁昭和60年1月31日判決・家庭裁判月報37巻8号39頁、最高裁昭和62年3月3日判決・判例タイムズ638号130頁)。

遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合、実務においては、遺産分割は遺産分割の時に実際に存在する財産(当該処分された財産を除いた遺産)を基準に遺産分割を行い、当該処分によって当該共同相続人が得た利益を遺産分割においては特段考慮しないという扱いがされてきました。
そうすると、当該処分をした者の最終的な取得額が当該処分を行わなかった場合と比べると大きくなり、その反面、他の共同相続人の遺産分割における取得額が小さくなるという計算上の不公平が生じ得ることとなっていました。
そこで、平成30年改正相続法906条の2では、遺産分割前に遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人が処分した場合に、処分をしなかった場合と比べて利得をすることがないようにするため、遺産分割においてこれを調整することができるようになりました。

  1. 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる(民法906条の2第1項)。
  2. 前項の規定にかかわらず、共同相続人の1人または数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない(同条2項)。

代償財産

共同相続人の全員の合意によって遺産に属する個別財産が処分された場合、売却代金などの代償財産は遺産分割の対象となるか否かの問題があります。
この点につき、2件の最高裁判決があります。

最高裁昭和52年9月19日判決・判例時報868号29頁

「共同相続人が全員の合意によって遺産分割前に遺産を構成する特定不動産を第三者に売却したときは、その不動産は遺産分割の対象から逸出し、各相続人は第三者に対し持分に応じた代金債権を取得し、これを個々に請求することができる」

最高裁昭和54年2月22日判決・判例タイムズ395号56頁

「共有持分権を有する共同相続人全員によって他に売却された右各土地は遺産分割の対象たる相続財産から逸出するとともに、その売却代金は、これを一括して共同相続人の一人に保管させて遺産分割の対象に含める合意をするなどの特別の事情のない限り、相続財産には加えられず、共同相続人が各持分に応じて個々にこれを分割取得すべきものである」

不動産の賃料

相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けません。

最高裁平成17年9月8日判決・民集59巻7号1931頁

「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」

祖先祭具・遺体・遺骨

系譜、祭具、墳墓といった祖先祭具等は、相続の対象とはならず、祖先の祭祀の主宰者に帰属します(民法897条)。

コラム

遺産分割の方法

遺産分割の手続には、①協議分割、②調停分割、③審判分割の3つがありますが、いずれの分割においても、遺産分割の具体的方法には次の方法があります。

現物分割

現物分割とは、1つ1つの財産を誰が取得するのか決める方法です。原則的な方法がこの現物分割です。
例えば、「親Aの住んでいた大阪の土地・建物は、Xが取得する。東京の土地・建物はYが取得する。預金はZが取得する」という方法です。つまり、遺産そのものを現物で分ける方法です。
現物分割による場合、各相続人の取得分を相続分通りにすることは難しいため、次に紹介する代償分割により補完することも多いでしょう。

換価分割

換価分割とは、遺産を売却してお金に換えたうえで、その金銭を分ける方法です。
現物を分割すると価値が下がる場合、換価分割によるしか方法がない場合などは、換価分割によることになります。
換価分割の場合は、遺産を売却することになりますので、売却費用や譲渡所得税などを考慮する必要があります。

遺産分割協議における換価分割

遺産分割協議において換価を行う場合、任意売却をし、その代金の分配につき協議により決めることになります。

審判における換価分割

審判において換価分割を行う場合、競売が原則ですが、任意売却を命じることもできます。
競売の注意点は、競売手続は、家庭裁判所が自動的に行ってくれるのではなく、民事執行の手続により競売手続が進められることです。すなわち、換価分割の審判をもらっても、その後、換価を希望する相続人が地方裁判所の執行部に競売を求めなければならないのです。不動産の場合には、最低100万円程度の予納金を納めなければなりませんし、競売となると、多くの場合には落札価額は著しく低くなってしまいます。
ですから、「相手方がこちらの思う通りの分割に応じないなら、競売だ!」と言っても、そう簡単には進みません。換価分割を選ぶときにはくれぐれも注意してください。

家事事件手続法194条(遺産の換価を命ずる裁判)

1項 家庭裁判所は、遺産の分割の審判をするため必要があると認めるときは、相続人に対し、遺産の全部又は一部を競売して換価することを命ずることができる。

2項 家庭裁判所は、遺産の分割の審判をするため必要があり、かつ、相当と認めるときは、相続人の意見を聴き、相続人に対し、遺産の全部又は一部について任意に売却して換価することを命ずることができる。ただし、共同相続人中に競売によるべき旨の意思を表示した者があるときは、この限りでない。

3項 前2項の規定による裁判(以下この条において「換価を命ずる裁判」という。)が確定した後に、その換価を命ずる裁判の理由の消滅その他の事情の変更があるときは、家庭裁判所は、相続人の申立てにより又は職権で、これを取り消すことができる。

4項 換価を命ずる裁判は、第81条第1項において準用する第74条第1項に規定する者のほか、遺産の分割の審判事件の当事者に告知しなければならない。

5項 相続人は、換価を命ずる裁判に対し、即時抗告をすることができる。

6項 家庭裁判所は、換価を命ずる裁判をする場合において、第200条第1項の財産の管理者が選任されていないときは、これを選任しなければならない。

7項 家庭裁判所は、換価を命ずる裁判により換価を命じられた相続人に対し、遺産の中から、相当な報酬を与えることができる。

8項 第125条の規定及び民法第27条から第29条まで(同法第27条第2項を除く。)の規定は、第6項の規定により選任した財産の管理者について準用する。この場合において、第125条第3項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「遺産」と読み替えるものとする。

代償分割

特定の相続人が、特定の財産を相続する代わりに、他の相続人に金銭などを与える方法が代償分割です。
例えば、「Xが親Aの経営していた会社の株式や店舗(土地・建物)を相続し、その代わりに、XがYに代償金(3,000万円)を支払う」といった方法です。単純に遺産を現物分割してしまうと、Xが事業を承継できなくなってしまいます。そこで、Xが親Aの事業を承継するために代償分割によるわけです。
審判による代償分割は、遺産を取得する相続人に代償金の支払能力がない場合は許されません(最高裁平成12年9月7日決定・家庭裁判月報54巻6号66頁)。また、代償分割は、「特別の事情」があるときにのみ認められます(家事事件手続法195条)。「特別の事情」とは、①現物分割が不可能な場合、②現物分割をすると分割後の財産の経済的価値を著しく損なうため不適当である場合、③特定の遺産に対する特定の相続人の占有・利用状態を特に保護する必要がある場合、④共同相続人間に代償金支払の方法によることについておおむね争いがない場合、などが挙げられています。

家事事件手続法195条(債務を負担させる方法による遺産の分割)

家庭裁判所は、遺産の分割の審判をする場合において、特別の事情があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて、現物の分割に代えることができる。

家事事件手続法196条(給付命令)

家庭裁判所は、遺産の分割の審判において、当事者に対し、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

共有分割

一部の相続人が共有で取得することを希望する場合、共有分割を行い、共有状態とすることもできます。

コラム

遺産分割の時期

分割の自由

遺産分割は、被相続人の死亡後に行いますが、法律上、期限はありません。したがって、遺産分割を行わないまま放置することも可能であり、また、遺産分割請求権は消滅時効にかかりません。
一方、各共同相続人は、原則として、いつでも自由に遺産分割を請求できます(民法907条1項)。共同相続人の1人は、他の共同相続人が分割を望まない場合でも、遺産分割協議を請求することができ、協議が不調に終わったときでも、家庭裁判所の審判により遺産分割をすることができます(同条2項)。

遺産分割放置の弊害

ただし、遺産分割を放置することにより次のような弊害がありますので、なるべく早期に遺産分割を行うことが望ましいと言えるでしょう。

相続税の軽減

相続税において配偶者控除、小規模宅地等の特例を利用して税額の軽減を受けるためには、遺産分割が行われている必要があります。

遺産の取得時効

遺産が誰かに占有されている場合、長期間放置すると取得時効が完成してしまう可能性があります。

債権の消滅時効

債権を放置しておくと消滅時効が完成してしまう可能性もあります。

数次相続の発生

遺産分割が長期間放置されると、相続人が死亡して更に相続が開始し、相続人が増えてしまう可能性があります。

資料の散逸

長期間の経過により、資料が散逸してしまうおそれがあります。

遺産分割の禁止

例外的に、遺産分割が禁止されることがあります。

遺言による遺産分割の禁止

被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁じることができます(民法908条)。分割の禁止は、遺産の全部についても、遺産のうち一部の特定の財産についても許されます。

協議・調停による遺産分割の禁止

共同相続人は、5年を限度として分割をしないとの契約をすることができます(民法256条1項)。この期間は更新により伸長することができますが、一度の更新で延長できるのは5年が限度です(同条2項)。

審判による分割禁止

特別な事由があるときに限り、家庭裁判所は、期間を定めて遺産の全部または一部について分割を禁止することができます(民法907条3項)。たとえば、①遺言による廃除(民法893条)、親子関係不存在確認の訴え、認知無効の訴え(民法786条)等により相続人としての資格が問題とされている場合や、②遺産の範囲をめぐって争いが生じている場合であって、これらの前提問題についての訴訟の進捗または解決を待つのが全相続人にとっての共通の利益になる場合です。

遺産分割の当事者

共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人

遺産分割の当事者は、共同相続人のほか、包括受遺者(民法990条)、相続分譲受人です。

相続人の中に不在者がいる場合

共同相続人中に行方不明その他の不在者がいる場合には、不在者自身が置いた管理人または利害関係人もしくは検察官の請求によって選任された財産管理人を当事者として、遺産分割手続を行わなければなりません(民法25~29条)。

相続人の中に認知症等で協議できない者がいる場合

この場合、家庭裁判所に成年後見人の選任を申立て、成年後見人と遺産分割協議を行うことになります。
相続人が被保佐人である場合、遺産分割は同意を必要とする事項ですので(民法13条1項6号)、被保佐人は保佐人の同意を得る必要があります。保佐人が遺産分割をすることについての代理権付与の審判(民法876条の4)を受けて被保佐人を代理することもできます。
相続人が被補助人である場合、自分で遺産分割をすることができます。ただし、遺産分割をすることについての同意権付与の審判(民法17条)がされたときは、補助人の同意が必要です。補助人が遺産分割をすることについての代理権付与の審判(民法876条の9)を受けて被補助人を代理することもできます。

相続人の中に未成年者がいる場合

共同相続人の中に未成年者がいる場合は、親権者がこの者の法定代理人として遺産分割をすることは利益相反となります(最高裁昭和48年4月24日判決)。この場合には、未成年者のために特別代理人を選任しなければなりません。

最高裁昭和48年4月24日判決・判例時報704号50頁

民法826条所定の利益相反する行為にあたるか否かは、当該行為の外形で決すべきであって、親権者の意図やその行為の実質的な効果を問題とすべきではないので(最高裁昭和34年(オ)第1128号同37年10月2日第三小法廷判決・民集16巻10号2059頁、同昭和41年(オ)第79号42年4月25日第三小法廷判決・裁判集民事87号253頁参照。)、親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは、かりに親権者において数人の子のいずれに対しても衡平を欠く意図がなく、親権者の代理行為の結果数人の子の間に利害の対立が現実化されていなかったとしても、同条2項所定の利益相反する行為にあたるから、親権者が共同相続人である数人の子を代理してした遺産分割の協議は、追認のないかぎり無効であると解すべきである。

遺産分割の手続

協議分割

協議分割とは、相続人が協議により遺産分割を行う方法のことをいいます。
遺産分割協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の共有であった遺産が遺産分割協議書の内容にしたがって分割され、各相続人が具体的に取得するのです。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書には決まった書式(書き方)はありませんが、いくつか注意点があります。

協議の方法

必ず法定相続人全員で協議しなければなりません。戸籍調査のうえ、間違いの無いように注意してください。
必ずしも相続人全員が一堂に会して協議する必要はなく、持ち回りで署名・捺印する方法で遺産分割協議書を作成してもかまいません。

署名・捺印

法定相続人の署名ですが、後々のトラブルを防ぐためにも必ず自筆で署名するようにしてください。
印鑑は実印を使わないと、不動産登記や銀行手続が出来ません。

財産の表示方法

不動産の場合、住所ではなく登記簿どおりの表記にしてください。銀行などは、支店名・口座番号まで書いてください(ただし、残高は変動する可能性がありますので、記載すべきではありません)。
相続人の1人が全ての遺産を取得する場合は「相続人Aが全ての遺産を取得する」とだけ記載してもかまいません。

割り印

遺産分割協議書が用紙数枚にわたる場合、法定相続人全員の実印で契印(割り印)してください。

印鑑証明書の添付

遺産分割協議書には、実印で押印し、印鑑登録証明書を添付してください。

コラム

調停分割

遺産分割は、共同相続人間における協議により行うことが基本ですが、誰がどの遺産を取得するのか、具体的な相続分をどのようにするのか、さらには、特別受益や寄与分の問題などをめぐって協議がまとまらないことも多々あります。
この場合、相続人は、遺産分割の調停を裁判所に申し立てることができ(家事事件手続法244条)、家庭裁判所において話し合いが行われます。

遺産分割調停の手続
  1. 相続人が1人もしくは数人で申立人となり、家庭裁判所に対し、他の相続人らを相手方として、遺産分割調停申立書を提出します。
  2. 家庭裁判所は申立てから1ヶ月位後に全員を呼び出します(第1回調停期日)。当日、指定された時間に家庭裁判所に出向き、申立人は申立人側控室で、相手方は相手方控室でそれぞれ待機します。調停は調停委員2人で担当し、まず申立人の意見を聴き(この間、相手方は控室で待機しています)、ついで相手方の意見を聴き(この間、申立人は控室で待機しています)、双方の意見を調整してゆくという方法で進行します。このように、調停は調停委員が間に入って話し合いを進めてゆくものであり、申立人と相手方が直接交渉するのではありません。1回の期日はおおむね2時間程度行われ、話し合いがまとまらなければ、次回期日が指定されます。調停期日は1ヶ月に1回程度の間隔で開かれます。
  3. 調停委員は、相続財産の範囲、遺言の有無を確認し、各相続人が具体的に取得する遺産などにつき、相続人全員の意見を調整してゆきます。
  4. 意見がまとまれば、家庭裁判所は遺産分割調停を成立させ、調停調書が作成されます。これにより、不動産を取得した者は移転登記手続を行うことができ、預金を取得した者は預金の解約をすることができます。調停はあくまで話し合いですので、意見がまとまらなければ、調停は不成立となり、審判手続に移行することになります。

審判分割

遺産分割調停が成立しなかったときは、調停の申立てがあった時に審判の申立があったものとみなされ(家事事件手続法272条4項)、当然に審判に移行します。
審判手続では、家庭裁判所の裁判官が、審判により遺産を分割します。これが審判分割です。
審判には、判決と同じ効力がありますので、高等裁判所で覆らない限り、当事者は審判に従わなければなりません。

コラム

遺産分割後の問題

遺産分割が行われた後、遺産分割に参加した者に誤りがあった場合や遺産分割すべき財産に誤りがあったことが判明することがあります。
遺産分割に際しては、このような問題が起こらないよう慎重に行うことが必要ですが、後日誤りがあったことが判明した場合、個別に対応せざるを得ません。

コラム

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遺産分割協議サポート

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サポート内容

相続人調査、相続財産調査、遺産分割調停、審判手続の対応などを行います。

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