相続紛争に巻き込まれた税理士の報酬に関する東京地判平成26.1.23

 東京地裁平成26年1月23日判決は、税理士の相続税申告等にかかる報酬について明確な約束がなく、相続人の1人が報酬支払を拒否したため、税理士が当該相続人に報酬請求を行った事案です。

 税理士報酬が発生するか否か、発生する場合の算定基準が争点ですが、税理士が相続紛争に巻き込まれている実態が現れていますのでご紹介します。

前提事実

①被相続人はAと妻Bである。

Bは平成19年6月、Aは同年9月に死亡した。

B相続財産の相続税申告期限は平成20年4月、A相続財産の相続税申告期限は平成20年7月となる。

②相続人は子Cと子Dである。

③平成20年1月、C及びDはA及びBの相続税申告業務をX税理士に委任した。

④X税理士は、Aによる公正証書遺言において遺言執行者として指定され、これを了承した。

⑤CとDは各自弁護士を選任しており、相続について紛争が生じていた模様である。

紛争の概要

①平成20年3月、X税理士はB相続財産に関する相続税申告書を作成し、これを踏まえて,同月28日、Cの代理人弁護士とDの代理人弁護士に宛てて準備が整った旨を通知した。

②平成20年4月2日、X税理士の事務所において、X税理士、C及びDの間でB相続財産に関する相続税申告業務についての協議がなされたが、その際、X税理士からDに対して,①Cと共同で申告する場合には申告書に押印してX税理士事務所まで返送する、②Dが単独で申告する場合には自己の責任において申告する、という2つの選択肢が示され、いずれかを選択するよう指示がなされた。

③平成20年4月11日、Dは、X税理士に対し、Dが自ら行う方法を選択した旨を通知した。

④平成20年4月14日、Dは単独でB相続財産に関する相続税申告を行った。

⑤平成20年4月15日、X税理士はCのみの分としてB相続財産に関する相続税申告を税務代理にて行った。

⑥平成20年6月、X税理士は、Aの相続財産に関する相続税申告書を作成し、これを踏まえて、同月28日、D代理人弁護士に宛ててこれを送付すると共に、A相続財産に係る相続税申告につき、X税理士が税務代理にて行うか、Dが自分で行うか選択するよう求めた。

⑦DはX税理士に申告書を返送し、単独でA相続財産に関する相続税申告を行った。

⑧平成20年7月4日、X税理士はCのみの分としてA相続財産に関する相続税申告を税務代理にて行った.

⑨A相続財産に関する相続税申告について税務署の調査が入り、Dは修正申告を行って、加算税60万円と延滞税27万円を納付した。

⑩D代理人がX税理士に対して相続財産に関して問い合わせた通知文書が、無断でCの代理人弁護士に交付されていた。

X税理士による報酬請求とDの主張

 申告等に関する報酬請求をしたところ、Dは概ね次のように主張して争いました。

①支払条件が成就していない。

②契約を解除した。

③相続財産目録の交付や不動産の調査、書画骨董に関する報告等はいずれも遺言執行者としての業務であり、相続税申告とは関係がない。

④Dに交付された申告書は参考資料に過ぎない。

⑤X税理士による申告書に不備があった。

判決

 X税理士報酬として19万円を認めました。

コメント

 判決文からは必ずしも明らかではありませんが、X税理士がCとDの相続紛争に巻き込まれた核心的な理由は次の点だと推測されます。

①CとDは別々に弁護士を選任しているように、相続について深刻な紛争が生じていた。

②Aの作成した公正証書遺言の内容によりCとDの間で紛争が生じていたのではないかと思われる。

③上記遺言でX税理士が遺言執行者に指定されていることからすると、同遺言作成につき、X税理士が深く関与していたのではないか。そうすると、Dからすると、X税理士はDに不利な内容の遺言をAに作成させた人間ということになり、この時点でX税理士とDは対立関係にあった。

④このような状況において、X税理士は遺言執行者に就任し、且つ、A相続財産の相続税申告とB相続財産の相続税申告につきCとDの双方から依頼を受けて相続税申告業務に着手した。

 すなわち、Dからすると、X税理士は、Dにとって不利な遺言をAに作らせた張本人であり、D代理人がX税理士に対して相続財産に関して問い合わせた通知文書が、無断でCの代理人弁護士に交付されていたというようにDと対立するような行動を取っていた人間ということになります。

 そうしますと、DはX税理士が行うこと全てについて文句を言いたくもなるというものです。

 結局、X税理士は単に相続紛争に巻き込まれてしまったのではなく、D側の人間であるにもかかわらず、中立が求められるCとD両名のための相続税申告業務および遺言執行者の業務を行おうとしたことが原因ではないのでしょうか。

 専門家としては十二分に注意したいところです。

(弁護士 井上元)

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