遺骨の承継につき判断した大阪家審平成28.1.22

 祭祀に関する権利(系譜、祭具及び墳墓)の所有権の帰属については民法897条で規定されていますが、遺骨についての規定がありません。遺骨の所有権を巡って争いが生じた場合において、裁判所が判断した事例がありますのでご紹介します。

大阪家庭裁判所平成28年1月22日審判

事案の概要

 被相続人は平成26年に死亡したところ、被相続人の姪・甥であるXらが、被相続人と親族関係はないが緊密な生活関係にあったYに対し、祭祀財産(遺骨等)の承継者の指定及びその引渡しを求めた。

審判の内容

 審判は、祭祀財産は存在せず、被相続人の位牌についてはYが被相続人の死亡後に依頼して作成したものでありYの所有に属することは明らかであるとしたうえで、遺骨につき次のように判示し、結論として、被相続人の遺骨の取得者としてYを指定するのが相当と判断した。

判断基準

「被相続人の遺骨については、生前の被相続人に属していた財産ではないから、相続財産を構成するものではなく、民法897条1項本文に規定する祭祀財産にも直接には該当しない。しかしながら、遺骨についての権利は、通常の所有権とは異なり、埋葬や供養のために支配・管理する権利しか行使できない特殊なものであること、既に墳墓に埋葬された祖先の遺骨については、祭祀財産として扱われていること、被相続人の遺骨についても、本件の関係者の意識としては、祭祀財産と同様に祭祀の対象として扱っていることなどからすると、被相続人の遺骨について、その性質上、祭祀財産に準じて扱うのが相当である。したがって、被相続人の指定又は慣習がない場合には、家庭裁判所は、被相続人の遺骨についても、民法897条2項を準用して、被相続人の祭祀を主宰すべき者、すなわち遺骨の取得者を指定することができるものというべきである。」

被相続人の祭祀を主宰すべき者(被相続人の遺骨の取得者)の指定について

 被相続人による祭祀財産の承継者の指定はなく、祭祀財産の承継者となるべきものについての慣習があると認めることもできないとしたうえで、次のように判示した。

「そうすると、家庭裁判所が、被相続人の祭祀を主宰すべき者(被相続人の遺骨の取得者)を指定することになるが、その指定にあたっては、被相続人との身分関係や生活関係、被相続人の意思、祭祀承継の意思及び能力、祭具等の取得の目的や管理の経緯、その他一切の事情を総合して判断するのが相当である。

 しかるに、本件においては、Yは、被相続人とは親族関係にないものの、約45年前に知り合い、平成9年に妻の○が死亡した後、被相続人が居住している本件マンションを訪問し、少なくとも月に数日は生活を共にし、被相続人と一緒に旅行に出かけたりしていたほか、被相続人との間で数百万円の金銭の授受をしていたこと、Yは、被相続人が死亡した際には、葬儀業者に連絡して被相続人の葬儀を主宰し、葬儀費用を負担し、被相続人の遺骨を現に所持し、位牌や戒名の手配をしていることなどからすると、被相続人との生活関係は緊密であり、被相続人としても、近年、生活の一定部分をYと共にし、Yとの間で多額の金銭の授受があったことなどからすると、Yを信頼しており、遺骨についてもYに委ねる意思を有していたと考えることができる。

 他方、Xらは、被相続人の姪・甥にあたり、近年、病院に被相続人を見舞いに行ったり、本件マンションの管理をしたりなどしているが、Yと比較すると、被相続人との関係は希薄であるといえること、被相続人の葬儀をYが主宰することに異議を述べたり、自ら費用の負担を申し出たりしたことをうかがわせる資料はなく、それを是認していたと考えられることなどからすると、Yとの比較において、被相続人の遺骨の取得者とするのは相当でない。なお、Xらは、Yが被相続人の遺骨を納めることを予定している○寺は合祀を前提としていることを問題視しているが、遺骨をどの寺に納骨するかは遺骨の取得者に委ねられており、遺骨の取得者の指定にあたっての判断に影響を与える事情とはいえない。」

コメント

 遺骨の所有権については、①相続財産を構成し相続人に帰属するとの見解、②相続財産を構成せず慣習上定まった喪主たるべき者に当然に帰属するとする見解、③民法897条を準用し祭祀主宰者が所有権を取得するとする見解がありましたが、最高裁平成元年7月18日判決は「本件遺骨は慣習に従って祭紀を主宰すべき者である被上告人に帰属したものとした原審の判断は、正当」として③説を支持しました。

 上記大阪家庭裁判所平成28年1月22日審判はこれを前提とし、XらとYとのいずれを遺骨の取得者とするのが相当であるのか判断したものです。

 東京家裁平成21年3月30日審判も「遺骨についての権利は、通常の所有権とは異なり、埋葬や供養のために支配・管理する権利しか行使できない特殊なものであること、既に墳墓に埋葬された祖先の遺骨については、祭祀財産として扱われていること、被相続人の遺骨についても、関係者の意識としては、祭祀財産と同様に祭祀の対象として扱っていることなどからすると、被相続人の遺骨についても、その性質上、祭祀財産に準じて扱うべきものと解するのが相当である。したがって、被相続人の指定又は慣習がない場合には、家庭裁判所は、被相続人の遺骨についても、民法897条2項を準用して、被相続人の祭祀を主宰すべき者、すなわち遺骨の取得者を指定することができるものというべきである。」と判断しています。

民法897条(祭祀に関する権利の承継)

1項 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

2項 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

(弁護士 井上元)

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