歩道上空地の相続税上の評価につき判断した最判平成29.2.28

 私道の用に供されている宅地の相続税に係る財産の評価における減額につき、最高裁平成29年2月28日判決は、減額を認めなかった高裁判決を破棄しました。

 相続税について重要と思われますのでご紹介します。

最高裁平成29年2月28日判決

事案の概要

(1) 被相続人は、平成20年3月に死亡した。

(2) 遺産である各土地上には3~8棟の共同住宅が建築されており、インターロッキング舗装が施された幅員2mの歩道状空地が存在していた。

※ 日本道路建設業協会サイトでは「インターロッキングブロック舗装は、独特の幾何形状に製造された舗装用コンクリートブロックを、路盤またはアスファルト舗装基盤上に敷設し、ブロックの種類、形状、寸法、敷設パタ-ン、色調および表面テクスチャーを選ぶことにより、耐久性、安全性、快適性および景観性に優れた舗装です。また、近年においては、保水性、透水性、緑化性など環境にも配慮したブロック舗装も行われています。」とされています。

(2) 本件歩道状空地は、市長から都市計画法所定の開発行為の許可を受けて共同住宅を建築した際に、市の「都市計画法施行令第25条第2号ただし書の運用基準」を踏まえた市の指導によって、市道に接する形で整備された。

(3) 本件歩道状空地とこれらに接する市道との間には、若干の段差があるものの、特に出入りを遮るものはなく、外観上、車道脇の歩道として本件各共同住宅の居住者等以外の第三者も利用することが可能な状態となっている。なお、本件歩道状空地は、いずれも遅くとも平成25年4月以降、近隣の小学校の通学路として指定され、児童らが通学に利用している。

(4) 相続人らは、税務署長に対し、本件歩道状空地につき、不特定多数の者の通行の用に供されている私道供用宅地であるとしてその価額を評価せずに、本件相続に係る相続税申告書を提出した。

(5) 税務署長は、相続人らに対し、本件歩道状空地につき、私道供用宅地に該当せず、共同住宅の敷地(貸家建付地)として評価すべきであるとして更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をしたため、相続人らは処分の取消しを求めた。

高裁判決の内容

 私人が所有する道を私道と捉えた場合、①建物敷地の接道義務を満たすために建築基準法上の道路とされるものは、道路内の建築制限(同法44条)や私道の変更等の制限(同法45条)などの制約があるのに対し、②所有者が事実上一般の通行の用に供しているものは、特段の事情のない限り、私道を廃止して通常の宅地として利用することも可能であるから、評価通達24にいう私道とは、その利用に①のような制約があるものを指すと解するのが相当である。

 本件各歩道状空地は、建築基準法等の法令上の制約がある土地ではなく、また、本件各歩道状空地が市から要綱等に基づく指導によって設置されたことをもって上記①のような制約と評価する余地があるとしても、これは被相続人がそれを受け入れつつ開発行為を行うのが適切であると考えた上での選択の結果生じたものであり、上告人らが利用形態を変更することにより通常の宅地と同様に利用することができる潜在的可能性と価値を有するから、評価通達24にいう私道供用宅地に該当するとはいえない。

最高裁判決の内容

5 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

(1) 相続税法22条は、相続により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨を定めているところ、ここにいう時価とは、課税時期である被相続人の死亡時における当該財産の客観的交換価値をいうものと解される。そして、私道の用に供されている宅地については、それが第三者の通行の用に供され、所有者が自己の意思によって自由に使用、収益又は処分をすることに制約が存在することにより、その客観的交換価値が低下する場合に、そのような制約のない宅地と比較して、相続税に係る財産の評価において減額されるべきものということができる。

 そうすると、相続税に係る財産の評価において、私道の用に供されている宅地につき客観的交換価値が低下するものとして減額されるべき場合を、建築基準法等の法令によって建築制限や私道の変更等の制限などの制約が課されている場合に限定する理由はなく、そのような宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は、私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず、当該宅地の位置関係、形状等や道路としての利用状況、これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし、当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か、また、その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるというべきである。

(2) これを本件についてみると、本件各歩道状空地は、車道に沿って幅員2m歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので、いずれも相応の面積がある上に、本件各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる。また、本件各歩道状空地は、いずれも本件各共同住宅を建築する際、都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり、本件各共同住宅が存在する限りにおいて、上告人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い。そして、これらの事情に照らせば、本件各共同住宅の建築のための開発行為が被相続人による選択の結果であるとしても、このことから直ちに本件各歩道状空地について減額して評価をする必要がないということはできない。

(3) 以上によれば、本件各歩道状空地の相続税に係る財産の評価につき、建築基準法等の法令による制約がある土地でないことや、所有者が市の指導を受け入れつつ開発行為を行うことが適切であると考えて選択した結果として設置された私道であることのみを理由として、前記(1)において説示した点について具体的に検討することなく、減額をする必要がないとした原審の判断には、相続税法22条の解釈適用を誤った違法があるというべきである。

コメント

 上記最高裁判決は、本件歩道状空地につき、高裁が判断したように共同住宅の敷地(貸家建付地)ではなく、私道供用宅地に該当すると判断しました。

 しかし、上記のとおり、①相応の面積があること、②共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていること、③市の指導によって市道に接する形で整備されたこと、等の事情が考慮されたものです。

 一般には、これだけの条件を満たす私道は少ないかもしれませんが、相続税の申告に際しては、上記最高裁判決にも留意してください。

参考

相続税法

(評価の原則)

第22条 この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

財産評価基本通達

(評価の方式)

11 宅地の評価は、原則として、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げる方式によって行う。(昭41直資3-19改正)

(1) 市街地的形態を形成する地域にある宅地 路線価方式

(2) (1)以外の宅地 倍率方式

(私道の用に供されている宅地の評価)

24 私道の用に供されている宅地の価額は、11≪評価の方式≫から21-2≪倍率方式による評価≫までの定めにより計算した価額の100分の30に相当する価額によって評価する。この場合において、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しない。(平3課評2-4外・平11課評2-12外改正)

(弁護士 井上元)

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