死因贈与と民法994条2項の準用の有無

 遺言により遺贈された場合、受遺者が遺言者の死亡以前に死亡すると当該遺贈の効力は生じないとされています(民法994条1項)。

 これに対し、「相続させる」旨の遺言がされた場合の規定はありませんが、最高裁平成23年2月22日判決は、遺言者が代襲者等に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限りその効力を生じないとしています。

 死因贈与の場合も法律に規定はありませんが、どのように解されているのでしょうか?

 この点、民法994条2項の準用を肯定する見解と否定する見解があります。肯定する見解は、受贈者が贈与者より先に死亡した場合には死因贈与は効力を失うというもの、否定する見解は、受贈者の相続人が受奏者たる地位を承継するというものです。

 上記争点について判断した裁判例がありますのでご紹介します。

民法994条2項の準用を肯定する裁判例

東京高裁平成15年5月28日判決

 死因贈与につき民法994条1項が準用されるか否かについてみるに、死因贈与が無償の財産供与行為であり、かつ、供与者の死亡によって本来は相続人に帰属すべき財産を相続人に帰属させないで相手方に供与するという点で遺贈と共通性を有することは前記(1)のとおりである。また、死因贈与も、その無償性に照らして何らかの個別的な人間関係に基づいてされるものであることも、遺贈と共通するといってよいであろう。そうすると、贈与者の意思は、遺贈と同様に、そのような個別的な人間関係のある特定の受贈者に向けられていると解されるから、前記のような趣旨でもうけられた民法994条1項を死因贈与について準用することについては格別不合理なところはなく、むしろ準用することが相当であるというべきである。

民法994条2項の準用を否定する裁判例

京都地裁平成20年2月7日判決

 民法994条1項は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合、遺贈は効力を生じないと規定するが、遺贈は遺言者の一方的意思表示によってなされるものであるから、同時死亡の場合は別としても、受遺者が遺言者より先に死亡した場合には遺言者は当該遺贈の目的物を自己の意思に従って再度処分できるとするのが相当であるから、民法994条1項の規定は合理的な理由がある。

 しかし、死因贈与は贈与者と受贈者との間の契約である以上、贈与者の意思で一方的に撤回することはできない(但し、書面によらない死因贈与は、履行の終わった部分を除き、撤回することができる〔民法550条〕。)うえ、契約成立の時点において、受贈者には贈与者の死亡によって当該死因贈与の目的物を取得できるという期待権が生じているといえる。

 上記のような遺贈と死因贈与の相違及び民法994条1項を死因贈与に準用する旨の明文の規定がないことを考慮すれば、受贈者が贈与者より先に死亡した場合、死因贈与は効力を生じないとはいえない。

 したがって、受贈者が先に死亡したとしても、その後、贈与者が死亡した場合、死因贈与は効力を生じ、当該死因贈与の目的物は受贈者の遺産になると解される。

水戸地裁平成27年2月17日判決

 死因贈与であると認定したうえで、受贈者の代襲者が相続したことを認めた。

コメント

 学説では民法994条2項の準用を肯定する見解が主流のようですが、否定する見解にも説得力があり、この争点については流動的だと言えるでしょう。

 実務的には、既に紛争が発生している場合は別として、これから死因贈与契約を締結するのなら、争いがあることを踏まえて対応することが必要でしょう。

(弁護士 井上元)

相続の法律相談ご予約

フリーアクセス:0120-967-330(御予約受付:平日 午前9:30~12時、午後1時~ 5:30)

相談予約で夜間・土曜面談対応いたします。

メールでのご予約は24時間受付

土曜相談会のご案内

毎月1回、土曜日に相談会を行います。

初回1時間無料・予約制

詳細はここをクリックしてください

OSAKAベーシック法律事務所

御堂筋線・京阪電鉄淀屋橋駅1分

〒541-0042
大阪市中央区今橋 4 丁目 3 番 6 号
淀屋橋 NAO ビル 3 階

交通至便 淀屋橋駅1分

アクセスマップはこちら

専門家ネットワーク

弁護士
税理士、司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、その他の専門家

Q&A 任意後見入門



任意後見契約締結から終了まで分かりやすく解説しています!