未支給年金は相続財産か?
未支給年金とは、年金を受けている方が亡くなったときにまだ受け取っていない年金や、亡くなった日より後に振込みされた年金のうち、亡くなった月分までの年金のことを言います。
未支給年金は相続の対象ではなく、受給者と生計を同じくしていた遺族が固有の権利として受け取ることができます(国民年金法19条)。
したがって、未支給年金は相続財産ではなく、相続放棄をしても、遺族が独自に請求して取得すればよいことになります。
支給停止の手続が間に合わず、被相続人名義の口座に未支給年金が振り込まれても、要件を満たした遺族が取得することに変わりはありませんが、相続発生後に被相続人名義の口座から出金することは相続放棄との関係で単純承認したとの疑念が生じ得ますので、なるべく速やかに支給停止の手続をとり、遺族の方が自ら請求することが好ましいと言えるでしょう。
未支給年金は相続財産ではありませんので、相続税の対象とはなりませんが、一時所得に該当します。
最高裁平成7年11月7日判決・民集49巻9号2829頁
「国民年金法19条1項は、『年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。』と定め、同条5項は、『未支給の年金を受けるべき者の順位は、第一項に規定する順序による。』と定めている。右の規定は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものでないことは明らかである。」