銀行の「遺言信託」とは?
遺言信託とは?
遺言により信託を設定することができ、遺言信託と呼ばれています(信託法2条2項2号、3条2号、4条2項)。
しかし、一般に「遺言信託」と呼ばれているものは、これとは違い、銀行が「遺言信託」と称して提供しているサービスです。内容は、①公正証書遺言作成、②遺言書保管、③遺言執行者就任が行われているようです。
具体的には、①銀行担当者と遺言内容の相談をし、遺言内容が決まれば、公正証書遺言を作成する、②銀行が遺言書を保管し、定期的に遺言者に照会する、③相続発生後、遺言執行者として遺言を執行する、との流れになるのが一般的と思われます。
遺言信託の長所・短所
長所
- 銀行が行うため、社会的信用が高く、安心である。
- 個人が遺言執行者に指定されれば、遺言者より先に死亡したり、相続開始時には遺言執行者としての業務を行うことができない可能性もあるが、銀行が遺言執行者に指定されれば、このような危険は少ない。
短所
- 相応の費用がかかり、遺産が少額である場合に利用することが困難である。
- 遺産の内容によっては、遺産を取得する相続人が遺言執行者に指定されることで十分な案件もある。
- 遺言をめぐって紛争が生じた場合、銀行は対応してくれない。
- 銀行担当者が必ずしも相続の専門家とは限らない。
どのような場合に遺言信託を利用すべきか
銀行の「遺言信託」を利用するか否かは遺言者ご自身の判断によりますが、概ね、①数億円以上の財産がある、②財産の内容が複雑である、③相続が開始するのは相当将来である、④遺言をめぐって相続人間で紛争が生じることはない、というような案件が対象となるものと思われます。
銀行の「遺言信託」を利用されるにしても、弁護士などの専門職によるセカンドオピニオンをお受けになってはいかがかと思います。