遺産分割協議の申し入れと遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求権の行使は、特段の様式が定まっているわけではなく、裁判手続によらなくとも、書面で遺留分侵害額請求の意思表示をすれば足ります。大事なことは、遺留分侵害額請求の意思表示をしたかどうかです。この遺留分侵害額請求の意思表示が行われたか否かが争われることがあります。
その中の一つとして、遺産分割の協議の申し入れはしたが、遺留分侵害額請求の意思表示を明示的にはしていないことがあります。最高裁平成10年6月11日判決の事案では、遺産分割協議の申し入れに遺留分侵害請求の意思表示が含まれていると解すべきとしていますが、遺言が有効であれば当該相続人が取得すべき遺産はなかったケースです。
遺留分侵害額の請求は明確に行うべきです。
最高裁平成10年6月11日判決・民集52巻4号1034頁
遺産分割と遺留分減殺とは、その要件、効果を異にするから、遺産分割協議の申入れに、当然、遺留分減殺の意思表示が含まれているということはできない。しかし、被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合には、遺贈を受けなかった相続人が遺産の配分を求めるためには、法律上、遺留分減殺によるほかないのであるから、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解するのが相当である。