相続放棄と登記
被相続人Aが死亡し、子B、C、Dが相続人となり、Bの債権者がBに代位して法定相続分による相続登記をし、差押さえた後、Bが相続放棄した場合、Bの相続放棄の効力は生じるのでしょうか?
この問題につき、最高裁昭和42年1月20日判決が判断しています。
最高裁昭和42年1月20日判決・民集21巻1号16頁
最高裁は次のように述べて、Bの相続放棄は登記なくして効力が生じると判断しました。
「民法が承認、放棄をなすべき期間(民法915条)を定めたのは、相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして、相続人の利益を保護しようとしたものであり、同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法938条)、相続人は相続開始時に遡って相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり、この効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである。」
相続の放棄は相続開始後の短期間にのみ可能であり、かつ、相続財産に処分行為があれば放棄が許されなくなるため、相続人の持分につき利害関係のある第三者が出現する余地は比較的少なく、そのような出現の可能性の少ない第三者を保護する必要は少ないからです。