欺罔して相続放棄させたことが違法として損害賠償を命じた事例

欺罔して相続放棄をさせた者に対する損害賠償請求につき判断した事例がありますのでご紹介します。

大阪高裁平成27年7月30日判決・判例時報2284号72頁

事例の概要

  1. 相続人Yが、他の相続人Xらに対し、被相続人が死亡したことを告げず、被相続人が交通事故ばかり起こして借金の方が多い、老人ホームに入所させたいので必要な書類を書いてほしい、生活保護に必要であるなどと伝えて相続放棄申述書を作成させ、これを裁判所に提出して相続放棄の申述をさせました。
  2. 欺罔した相続人Yは、外観上、唯一の相続人となり、不動産の売却、預金解約などを行いました。
  3. 相続人Xらは、相続放棄の取消しを申述し、受理されました。
  4. その後、相続人Xらは、欺罔した相続人Yに対し、不法行為に基づき損害賠償請求を行いました。

判決

判決は次のように述べて請求を認めました。

「Yは、平成24年3月10日ころ、□□東警察署から、本件被相続人が死亡したとの連絡を受け、□□市へ赴き、同月14日、本件被相続人の死亡届を提出し、本件被相続人を火葬に付したこと、同月17日、□□東警察署から、本件現金と共に、本件被相続人の遺留品を受け取り、同月19日、本件貯金の払戻を受けたこと、その後、同年4月下旬ころ、Xらに対しては、本件被相続人が死亡したことを告げないまま、本件被相続人が老人ホームに入所するため必要であるとか、生活保護を受給するため必要であるとの理由により、また、本件被相続人は、財産よりも借金の方が多いとの理由により、Yも含めた相続人全員が相続の放棄をしなければならないとXらに信じさせたこと、その上で、Xらに、Yの指示どおりに本件各相続放棄申述書及び本件各相続放棄申述回答書を作成させて本件各相続放棄申述をさせたことが認められる。Yは、以上のような手段を弄して、自らが本件被相続人の唯一の相続人であるという外観を作出した上、本件不動産を売却してその代金を取得し、本件預金の払戻を受けたことが認められる。そうすると、Xらは、本件欺罔行為により、本件各相続放棄申述をさせられ、これらがいずれも受理されることによって、本件相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされるのであるから(民法939条)、その結果、Xらは、各自の法定相続分に応じた財産的損害を被ったというべきである。したがって、本件欺罔行為は、Yらに対する関係で、不法行為を構成するというべきである。」

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